2011年6月26日日曜日

共生細菌の世界

時差ぼけは治らず。早朝にやっと寝られた。

ということで昨日に続き、大幅に遅れて大学に到着。Burmoniscus問題と出前授業の準備。

Burmoniscus問題、属名については決着。重要な表徴をSEMで確認。かなりの前進。脚についてはSEMだと分かりにくいので、線画を描く必要が、、、。どうやら、2種という結論になりそう。1種は未記載種。記載をするには綺麗な標本が欲しいので、とりあえず、sp.で論文を書いてしまう予定。

出前授業準備は、準備の準備をして終了。

金曜日に大学の本屋で見つけた本。


共生細菌の世界―したたかで巧みな宿主操作 (フィールドの生物学)

面白い。このシリーズは面白いけど、少し高いか。

共生というと、イソギンチャクとクマノミみたいなイメージがあるけど、この本で扱われているのは、内部共生と呼ばれ、宿主の細胞の中に生息している細菌の話。

このような細菌は、内部共生細菌と呼ばれ、宿主にとって不可欠な場合もある。例えば、アブラムシ。彼・彼女らの吸う植物の汁はアブラムシが生きていくには栄養が足りないのだが、共生細菌が必須栄養素を作り出してくれる。共生細菌を殺してしまうとアブラムシは生きていけない。

一方、宿主にとってこれといって得のない内部共生細菌もいる。著者の専門としているキチョウはこっち。ちなみに、ダンゴムシも内部共生細菌を保持するが、こっちの例に当てはまる(セルロース分解に関係する内部共生細菌の存在も議論されているが、、、)。

さて、面白いのは、自然選択は個体の遺伝子を多く残す戦略が進化する訳だが、仮に、共生細菌が宿主の母親→卵→子という経路でしか伝播しない場合、宿主の雄は生まれない方が細菌は多くの遺伝子を残すことが可能となる。

そして、実際に、そのような戦略が進化している。例えば、宿主が息子を産むと殺してしまう「オス殺し」、雄を雌に変えてしまう「性転換」、そして、非感染雌が子どもを産みにくくなる「細胞質不和合」、など。

著者は、ヴォルバキアという細菌がチョウの雄を雌に変えてしまう「性転換」を発見し、これは昆虫では世界初の発見だったそうだ。

モヤッとしか知らない分野だったので、とても勉強になった。

ヨーロッパでは、ヴォルバキアによるダンゴムシの性決定はとても盛んに研究されている。この本でも少し触れられているが、ダンゴムシなどの甲殻類は性ホルモンの量によって性が決定されるのだが、昆虫は性ホルモンで性が決定しないそうだ。したがって、ダンゴムシの場合、細菌は性ホルモンの量を調整すれば性を制御できるが、昆虫はそうはいかない。著者はここを突っ込んでスゴい業績をあげている。

直接参考になりそうなところとして、ヴォルバキア感染が遺伝子浸透を通して、ミトコンの系統樹を狂わせるという話。スロヴェニアでもTaitiさんが形態とミトコン系統樹の関係が合致しないことを悩んでたけど、私もしばしばこのような状況に出会う。やはり、核を調べないとダメなんだろう。

高校時代、彼氏と同じ大学に行くつもりが自分だけが合格して、当初は大学生活がつまらなかった、とか、面白エピソードもあったり、研究をガシガシ進めて行く感じが伝わる、一気に読める本。