学会は、とても勉強になった。
といっても大半は採集に出掛けていたので、シンポとポスター数本しか発表を聞けなかったが。とても参考になったことを、忘れる前にメモ。
鶴崎さんのシンポ::ザトウムシでは、同所的に生息する近縁種では体サイズが異なる場合があるが、これは繁殖干渉の影響ではないかと考えている。体サイズが似ていると間違って交尾してしまう。
鶴崎さんのシンポ:ラポポート則。高緯度地域生息する種ほど、分布域が広い。横軸に分布の中心緯度、縦軸に分布緯度の幅の相関図で説明。
富永さん他のポスター:イモリの系統地理学的研究では、山口は九州にくっつく。多くの動物で、山口と広島の間に、大きな分断があることが知られている。
國府方さんのシンポ:オーストラリアと日本に分布し、その間に分布がみられない分布様式を、anti-tropical distributional patternという。一般的な考え方は、昔は広く分布していたが、環境変化などで熱帯域で絶滅した。ただし、オーストラリアと日本を渡っている鳥もいるので、それに付着している場合もあるかも。
國府方さんのシンポ:北・中・南琉球の生物相の違いは、トカラギャップ、ケラマギャップによる分断で説明されることが多いが、そもそも、緯度が異なり、物理環境が変化するので、それでも説明が出来る場合がある。
岡本さん他のポスター:八丈島の外来種は虫類の研究を進める中で、九州南部〜琉球列島に由来する種が多いことが分かった。サソリモドキもこの一例。過去の発見報告が外来種を決定する上では重要。
シンポ:これまでの系統地理は分断を調べることが目的だったが、これからは分散と共存のメカニズムも大事。
戸田さんシンポ:生物の分布に面積と供給源からの距離、どちらかが重要なのかを調べる方法を紹介。琉球列島のは虫類でやってみたが、面積が重要という結果がほとんど。そこそこ、分散力のある生物で試すと良いのかも。でも、種分類や分布調査が進んでいる分類群でないとダメ。
こんな感じの図を作成し、いる・いない、を説明する線形判別関数を求めるらしい。切片は面積の影響、傾きは供給源からの影響を示すことになる。競争相手がいると2つの関数が重なり、分布が複雑になる。
原著はこれらしいが、まだ読んでいない。
A species-based theory of insular zoogeography
Limolino(2000)Global Ecology & Biogeography, 9, 39–58
記述内容については、私の聞き間違い・誤解の可能性も高いので、注意して下さい。
土壌動物学会と比べ、動物分類学会は知り合いが少ないので、よい刺激になった。沖縄ならではの人にも会えたし。