午前
・卒論手伝い(野外調査)
午後
・会議
・論文書き
屋久島に持ち込まれたオキナワキノボリトカゲの餌メニューに関する論文が受理されました。
Maejima S., Honda M., Ota H., Kato H., Ueno A., Karasawa S. (in press)
Food habits of the exotic lizard Diploderma polygonatum polygonatum (Agamidae, Squamata, Reptilia) at a World Heritage site, Yakushima Island, Japan
Journal of Asia-Pacific Biodiversity, ???: ???–???
筆頭著者は、鳥取大学農学部初代研究室の学生で、彼女の超地道な努力が形になって嬉しい!
この学年は4名全員が女性という初めての経験をした。この論文が受理されたことによって、全員の名前が論文に載った!
他の論文は下記、、、オキナワキノボリトカゲに加えて、フナムシ、マダニ_、シカでした。
太田風歌, 仲田彰男, 松田彩, 杉田幸司, 唐沢重考 (2024)
宍道湖,中海,および,浜名湖のフナムシ相 (Crustacea: Isopoda: Oniscidea) について—シンジコフナムシ Ligia shinjiensis Tsuge, 2008 の分布に注目して
Edaphologia, 114: 29–39
Karasawa S., Muto R., Harada M. (2023)
Relationship between abundances of hard ticks (Acari: Ixodida: Ixodidae) and distribution of sika deer (Cervus nippon) in Tottori Prefecture, Japan
Medical Entomology and Zoology, 74: 41–51
原田実樹, 武藤諒, 唐沢重考 (2022)
鳥取県東部のニホンジカの分布状況,および分布制限要因の推定
山陰自然史研究, 18: 1–9
2024年11月12日火曜日
2024年11月11日月曜日
生き物の「居場所」はどう決まるか
午前
・卒論手伝い(野外調査)
・Rゼミ
午後
・大学業務
・会議
・資料作成
タイトルの通り、生き物の「居場所」がどのようの決まるのか、という生態学の本質を研究史と併せて学べる本。
特に、ガウぜの競争排除則、すなわち、資源をめぐる種間競争が種の分布に影響するのか、という点(歴史的側面)についての説明に多くが割かれている。
高校でも勉強するこの法則は、自然界では、個体数は指数関数的に増加し、その結果として資源をめぐって競争が起こることを想定している。
しかし、草食動物や植食性昆虫の餌資源である植物は枯渇することなく、地球は緑の世界を維持できている。この事実は、これら動物は資源をめぐって競争していないことを示唆している。これは「緑の世界仮説」と呼ばれる。
実世界では、資源をめぐって競争が起こるほど個体数密度が増加する前に、捕食や撹乱によって個体数密度が低減されていることは様々な研究によって明らかになってきた。
つまり、密度の決定には、餌資源よりも、捕食者による捕食の影響が強いと考えられる。
このことから、生物にニッチは、対象とする生物種と天敵の相互作用によって、「天敵からの被害を少しでも軽減できる空間(天敵不在空間)」として占められる、という新しい考えが生まれた。
ちなみに、「天敵不在空間」は天敵が全くいない空間を指すのではなく、ある種が絶滅せずに個体数が維持できる環境を指す。
いわゆる、ボトムアップとトップダウン、どっちが大事?という問いである。
しかし、この本の面白いのは、この説明ではない。
1〜5章までかけて述べてきた「資源を巡る競争排除の否定」と「天敵による生息場所の制御」であるが、筆者自身がチョウの研究を通して「天敵不在空間」ではうまく説明できない現象を見つけてしまう。
そして、その説明のために、再度「競争」の概念を持ち出すことになる。しかし、資源を巡る競争ではなく、「繁殖」に関わる競争、すなわち「繁殖干渉」である。
生物の分布において繁殖干渉が(過去の影響も含めて)強く影響していると筆者は強調する。
ただし、資源を巡る競争も存在しないのではなく、条件が揃えば生じると記されている。なお、条件が揃うことは少ないので、資源を巡る競争はあまり生じないと示唆される。
新しい概念を紹介しているということではないが(むしろ、今では必須な考え?)、分布の決定要因という最も基本的なテーマについて、その歴史変遷も含めて学べるおすすめの一冊。特に、学術書よりも新書の方が読みやすいという方は手に取りやすいかと。
目次
第1章:「種」とは何か
第2章:生き物の居場所ニッチ
第3章:ニッチと種間競争
第4章:競争は存在しない
第5章:天敵不在空間というニッチ
第6章:繁殖干渉という競争
終章:たどり来し道
・卒論手伝い(野外調査)
・Rゼミ
午後
・大学業務
・会議
・資料作成
タイトルの通り、生き物の「居場所」がどのようの決まるのか、という生態学の本質を研究史と併せて学べる本。
特に、ガウぜの競争排除則、すなわち、資源をめぐる種間競争が種の分布に影響するのか、という点(歴史的側面)についての説明に多くが割かれている。
高校でも勉強するこの法則は、自然界では、個体数は指数関数的に増加し、その結果として資源をめぐって競争が起こることを想定している。
しかし、草食動物や植食性昆虫の餌資源である植物は枯渇することなく、地球は緑の世界を維持できている。この事実は、これら動物は資源をめぐって競争していないことを示唆している。これは「緑の世界仮説」と呼ばれる。
実世界では、資源をめぐって競争が起こるほど個体数密度が増加する前に、捕食や撹乱によって個体数密度が低減されていることは様々な研究によって明らかになってきた。
つまり、密度の決定には、餌資源よりも、捕食者による捕食の影響が強いと考えられる。
このことから、生物にニッチは、対象とする生物種と天敵の相互作用によって、「天敵からの被害を少しでも軽減できる空間(天敵不在空間)」として占められる、という新しい考えが生まれた。
ちなみに、「天敵不在空間」は天敵が全くいない空間を指すのではなく、ある種が絶滅せずに個体数が維持できる環境を指す。
いわゆる、ボトムアップとトップダウン、どっちが大事?という問いである。
しかし、この本の面白いのは、この説明ではない。
1〜5章までかけて述べてきた「資源を巡る競争排除の否定」と「天敵による生息場所の制御」であるが、筆者自身がチョウの研究を通して「天敵不在空間」ではうまく説明できない現象を見つけてしまう。
そして、その説明のために、再度「競争」の概念を持ち出すことになる。しかし、資源を巡る競争ではなく、「繁殖」に関わる競争、すなわち「繁殖干渉」である。
生物の分布において繁殖干渉が(過去の影響も含めて)強く影響していると筆者は強調する。
ただし、資源を巡る競争も存在しないのではなく、条件が揃えば生じると記されている。なお、条件が揃うことは少ないので、資源を巡る競争はあまり生じないと示唆される。
新しい概念を紹介しているということではないが(むしろ、今では必須な考え?)、分布の決定要因という最も基本的なテーマについて、その歴史変遷も含めて学べるおすすめの一冊。特に、学術書よりも新書の方が読みやすいという方は手に取りやすいかと。
目次
第1章:「種」とは何か
第2章:生き物の居場所ニッチ
第3章:ニッチと種間競争
第4章:競争は存在しない
第5章:天敵不在空間というニッチ
第6章:繁殖干渉という競争
終章:たどり来し道
2024年9月9日月曜日
Motion Detect Plus
午前
・卒論手伝い
・カメラ設定
午後
・カメラ設定
カメラの設定に半日をかけてしまった。
哺乳類の調査では自動撮影装置がしばしば用いられる。その多くは、赤外線センサーを発しておき、そこを熱源が通ると撮影する仕組みである。
したがって、外気温と温度差が小さい変温動物には適用できない。
最近、大学院生がタイムラプス撮影を用いて訪花昆虫の撮影を試みている。
この方法だと、(撮影時間によるが)数千〜万枚の画像が撮影され、そのうち数〜数10枚に撮影されている昆虫を探すという作業が必要になる。
その労力を打開する方法として大きく2つがある。
一つは、人間が探すのではなくAIに探してもらう方法。多分、こちらが今どきだと思う。
もう一つは、昆虫が訪花したときだけ撮影する方法である。しかし、上記の通り、赤外線センサーを使った方法が使えない。
そこで、期待されるのがmotion detection(モーション検知機能)、つまり、画角に変化が生じた場合にシャッターを切るという方法である。
少し話は変わり、 Canon Hack Development Kit(CHDK)という仕組みを用いると、一時的にCanonのデジカメを改造することができる。
また、CHDKには、様々なスクリプトが公開されており、それらを実行することで機能を拡張させることができる。
そして、、、Motion Detect Plusという、motion detection(モーション検知機能)を実行するためのスクリプトが公開されている!
ということで、中古の格安PowerShot G9を購入し、本日、半日かかりで設置した。どうにか動くようにはなった。
緑グリットに変化が生じると撮影される。グリット数や位置へ設置できる。 昆虫に摸したペンが近づいてくる。この段階ではシャッターは切られない。 そして、もう少し右に進むと、パシャ、と!下記が自動で撮影された画像。 少しでも動くと撮影されてしまうので、野外で使えるかは不明。例えば、フラッシュ設定にしておくと、撮影前の調光?のシグナルに反応するのか、何も変化していないのに連続で撮影をしてしまう。
この辺りは設定でどうにかしないと、、、。
元ネタは、この論文。
Steen R. (2017)
Diel Activity, Frequency and Visit Duration of Pollinators in Focal Plants: In Situ Automatic Camera Monitoring and Data Processing.
Methods in Ecology and Evolution, 8: 203–13.
参考にしたサイト
・IXY 920 IS へのCHDKの導入 ・CHDK【カメラ】インターバル撮影改造
・卒論手伝い
・カメラ設定
午後
・カメラ設定
カメラの設定に半日をかけてしまった。
哺乳類の調査では自動撮影装置がしばしば用いられる。その多くは、赤外線センサーを発しておき、そこを熱源が通ると撮影する仕組みである。
したがって、外気温と温度差が小さい変温動物には適用できない。
最近、大学院生がタイムラプス撮影を用いて訪花昆虫の撮影を試みている。
この方法だと、(撮影時間によるが)数千〜万枚の画像が撮影され、そのうち数〜数10枚に撮影されている昆虫を探すという作業が必要になる。
その労力を打開する方法として大きく2つがある。
一つは、人間が探すのではなくAIに探してもらう方法。多分、こちらが今どきだと思う。
もう一つは、昆虫が訪花したときだけ撮影する方法である。しかし、上記の通り、赤外線センサーを使った方法が使えない。
そこで、期待されるのがmotion detection(モーション検知機能)、つまり、画角に変化が生じた場合にシャッターを切るという方法である。
少し話は変わり、 Canon Hack Development Kit(CHDK)という仕組みを用いると、一時的にCanonのデジカメを改造することができる。
また、CHDKには、様々なスクリプトが公開されており、それらを実行することで機能を拡張させることができる。
そして、、、Motion Detect Plusという、motion detection(モーション検知機能)を実行するためのスクリプトが公開されている!
ということで、中古の格安PowerShot G9を購入し、本日、半日かかりで設置した。どうにか動くようにはなった。
緑グリットに変化が生じると撮影される。グリット数や位置へ設置できる。 昆虫に摸したペンが近づいてくる。この段階ではシャッターは切られない。 そして、もう少し右に進むと、パシャ、と!下記が自動で撮影された画像。 少しでも動くと撮影されてしまうので、野外で使えるかは不明。例えば、フラッシュ設定にしておくと、撮影前の調光?のシグナルに反応するのか、何も変化していないのに連続で撮影をしてしまう。
この辺りは設定でどうにかしないと、、、。
元ネタは、この論文。
Steen R. (2017)
Diel Activity, Frequency and Visit Duration of Pollinators in Focal Plants: In Situ Automatic Camera Monitoring and Data Processing.
Methods in Ecology and Evolution, 8: 203–13.
参考にしたサイト
・IXY 920 IS へのCHDKの導入 ・CHDK【カメラ】インターバル撮影改造
2024年8月26日月曜日
一寸の虫にも魅惑のトリビア
午前
・卒論手伝い(野外調査)
・書類作成
午後 ・書類作成
・論文書き
ザトウムシの本とほぼ同時に出版された鶴崎先生の本。
元は鳥取県版の新聞に書かれていた記事で、書籍にするにあたり書き直したそうだ。
タイトルにあるように、60の虫(昆虫ではなく小型の動物の意味)を様々な角度から紹介している。
「様々な角度」がこの本の醍醐味で、単なる形態は生活史の紹介ではなく、副題にある進化や行動生態学的な観点から説明がなされている。
そのため、紹介されている動物は、比較的身近なものが多いが(と言っても私は見たことない種が多い)、「そうなのか」と新しい発見が数多くある。
未解明のネタも書かれているので、研究ネタを見つけるのにも参考になるかも。
実際に研究で扱ったり、学生が興味を持ちそうな動物を選んでいるらしい。このように身近な動物を用いて、面白い話ができると良いなと痛感した。
新聞で紹介するにあたり、わざわざ生態写真の撮影を試みた種もいるそうだ。すぐにネット画像で誤魔化そうとする姿勢を反省した。
目次は長いので省略(60話分ある)。
・卒論手伝い(野外調査)
・書類作成
午後 ・書類作成
・論文書き
ザトウムシの本とほぼ同時に出版された鶴崎先生の本。
元は鳥取県版の新聞に書かれていた記事で、書籍にするにあたり書き直したそうだ。
タイトルにあるように、60の虫(昆虫ではなく小型の動物の意味)を様々な角度から紹介している。
「様々な角度」がこの本の醍醐味で、単なる形態は生活史の紹介ではなく、副題にある進化や行動生態学的な観点から説明がなされている。
そのため、紹介されている動物は、比較的身近なものが多いが(と言っても私は見たことない種が多い)、「そうなのか」と新しい発見が数多くある。
未解明のネタも書かれているので、研究ネタを見つけるのにも参考になるかも。
実際に研究で扱ったり、学生が興味を持ちそうな動物を選んでいるらしい。このように身近な動物を用いて、面白い話ができると良いなと痛感した。
新聞で紹介するにあたり、わざわざ生態写真の撮影を試みた種もいるそうだ。すぐにネット画像で誤魔化そうとする姿勢を反省した。
目次は長いので省略(60話分ある)。
2024年8月16日金曜日
ザトウムシ:ところ変われば姿が変わる森の隠遁者
午前
・卒論手伝い(野外調査)
午後
・授業手伝い
・データ整理
丸ごと一冊、鶴崎先生の専門であるザトウムシを扱った本。
ただし、単にザトウムシの分類や生態を紹介しただけの本ではない。
鶴崎先生自身の調査結果を、繁殖戦略や群集生態、マクロ分布パータンの法則などと照らし合わせて議論・解析がされている。とても勉強になった。
鶴崎先生の主な研究手法は、広範囲のサンプリングで得られた標本の形態観察と(染色体の)核型分析である。飼育実験も行われているが、前者が主であることは間違いない。
染色体観察という必殺技はあるものの、分布調査と形態観察は誰にでもできる。しかし、多くの場合、「●●に▲▲が居た」や「▲▲は■■の形態をしている」と単に事実を記載して終わってしまう。
一方、本書では、ザトウムシ研究を通して発見した地理的分布のパターンや特殊な形態を作り出す進化メカニズムに言及しており、とても読み応えのある一冊となっている。
しかも、その議論の範囲は広く、雄・雌先熟、地理的単為生殖、オスの2型、クライン・交雑帯と種認識、マクロ分布の法則(逆ベルクマンの法則、ラポポート則、種数-標高、種数-面積)、ミューラー型擬態、排他的分布と繁殖干渉、形質置換など、様々な角度から自ら見つけたパターンの説明を試みている。
加えて、染色体の変異に関する議論も行われている。
このように議論をするには、当たり前だが、これらの知識を持ち、深くその意味を理解していなければならない。
逆に捉えると、このような知識を持っていれば、単に生物の分布を調べたり、形態を観察するだけでも、様々な疑問が生まれ、そして、それを解く面白さを体験することができる。
生物の多様性を深く理解するには、生物の観察だけでなく、文献を読み知識をつけることが非常に重要であることを痛感させられる。
ザトウムシの一般的な形態的特徴や生活史の説明もあるが(30種のカラー写真や採集・保管方法の解析もある!)、本書はザトウムシを紹介した本というよりも、ザトウムシを通して、生物の多様化メカニズムに迫る本という印象を持った。
生物地理(分類?進化?)の研究者が、どのように生物を観察しているのか実感できる一冊。ザトウムシに興味がある人だけでなく、生物採集や生物観察から学術研究にステップアップしたい人にもおすすめ。
目次
第1章:ザトウムシとは
第2章:1年をどのように過ごすか
第3章:地理的変異と分布
第4章:日本のザトウムシ研究の開拓者
第5章:ザトウムシ雑学
第6章:採集の方法と標本の作り方
第7章:日本産ザトウムシ30種のプロフィール
・卒論手伝い(野外調査)
午後
・授業手伝い
・データ整理
丸ごと一冊、鶴崎先生の専門であるザトウムシを扱った本。
ただし、単にザトウムシの分類や生態を紹介しただけの本ではない。
鶴崎先生自身の調査結果を、繁殖戦略や群集生態、マクロ分布パータンの法則などと照らし合わせて議論・解析がされている。とても勉強になった。
鶴崎先生の主な研究手法は、広範囲のサンプリングで得られた標本の形態観察と(染色体の)核型分析である。飼育実験も行われているが、前者が主であることは間違いない。
染色体観察という必殺技はあるものの、分布調査と形態観察は誰にでもできる。しかし、多くの場合、「●●に▲▲が居た」や「▲▲は■■の形態をしている」と単に事実を記載して終わってしまう。
一方、本書では、ザトウムシ研究を通して発見した地理的分布のパターンや特殊な形態を作り出す進化メカニズムに言及しており、とても読み応えのある一冊となっている。
しかも、その議論の範囲は広く、雄・雌先熟、地理的単為生殖、オスの2型、クライン・交雑帯と種認識、マクロ分布の法則(逆ベルクマンの法則、ラポポート則、種数-標高、種数-面積)、ミューラー型擬態、排他的分布と繁殖干渉、形質置換など、様々な角度から自ら見つけたパターンの説明を試みている。
加えて、染色体の変異に関する議論も行われている。
このように議論をするには、当たり前だが、これらの知識を持ち、深くその意味を理解していなければならない。
逆に捉えると、このような知識を持っていれば、単に生物の分布を調べたり、形態を観察するだけでも、様々な疑問が生まれ、そして、それを解く面白さを体験することができる。
生物の多様性を深く理解するには、生物の観察だけでなく、文献を読み知識をつけることが非常に重要であることを痛感させられる。
ザトウムシの一般的な形態的特徴や生活史の説明もあるが(30種のカラー写真や採集・保管方法の解析もある!)、本書はザトウムシを紹介した本というよりも、ザトウムシを通して、生物の多様化メカニズムに迫る本という印象を持った。
生物地理(分類?進化?)の研究者が、どのように生物を観察しているのか実感できる一冊。ザトウムシに興味がある人だけでなく、生物採集や生物観察から学術研究にステップアップしたい人にもおすすめ。
目次
第1章:ザトウムシとは
第2章:1年をどのように過ごすか
第3章:地理的変異と分布
第4章:日本のザトウムシ研究の開拓者
第5章:ザトウムシ雑学
第6章:採集の方法と標本の作り方
第7章:日本産ザトウムシ30種のプロフィール
2024年8月9日金曜日
オカダンゴムシの遺伝構造
人生初のMRIを体験して、特に異常はないことが分かった。良かった。
和文+短報ですが、論文が受理された。卒論x2をまとめたもの。
大瀧由香・猪野真也・唐沢重考 (印刷中)
日本におけるオカダンゴムシArmadillidium vulgare (Latreille, 1804) の遺伝構造
Edaphologia
こんな感じの図。 短報だけど、結構、良いデータだと思っている。本当は海外のデータもたくさん入れるつもりだったけど、色々とあって諦めた。
和文+短報ですが、論文が受理された。卒論x2をまとめたもの。
大瀧由香・猪野真也・唐沢重考 (印刷中)
日本におけるオカダンゴムシArmadillidium vulgare (Latreille, 1804) の遺伝構造
Edaphologia
こんな感じの図。 短報だけど、結構、良いデータだと思っている。本当は海外のデータもたくさん入れるつもりだったけど、色々とあって諦めた。
2024年5月24日金曜日
フナムシ属
午前
・授業
・会議
午後
・授業
・会議
フナムシ属2種が記載された。
また、Ligia exoticaの和名をトライフナムシに変更することを提案している。
加えて、シンジコフナムシ(Ligia shinjiensis)がトライフナムシ(Ligia exotica)のシノニムであることを指摘している。記載についてはきちんと読んでいないけど、シノニムについては検討が必要っぽい。
Ariyama H., Hiki K. (2024)
A morphological and molecular study of Ligia exotica Roux, 1828 (Crustacea: Isopoda: Ligiidae) from Japan, with descriptions of two new species
Zootaxa, 5453: 451–486.
・授業
・会議
午後
・授業
・会議
フナムシ属2種が記載された。
また、Ligia exoticaの和名をトライフナムシに変更することを提案している。
加えて、シンジコフナムシ(Ligia shinjiensis)がトライフナムシ(Ligia exotica)のシノニムであることを指摘している。記載についてはきちんと読んでいないけど、シノニムについては検討が必要っぽい。
Ariyama H., Hiki K. (2024)
A morphological and molecular study of Ligia exotica Roux, 1828 (Crustacea: Isopoda: Ligiidae) from Japan, with descriptions of two new species
Zootaxa, 5453: 451–486.
2024年1月22日月曜日
昆虫と自然2024年2月号
午前
・授業
・授業準備
午後
・資料作成
昆虫と自然 2024年2月号 土壌昆虫と節足動物 多様性と生態系機能
2024年2月号の昆虫と自然は土壌動物特集。
卒業生と共著でワラジムシ亜目の種分類について書きました。
唐沢重考, 横井登太 (2024)
ダンゴムシ・ワラジムシの種分類の現在
昆虫と自然, 59: 23–28.
・授業
・授業準備
午後
・資料作成
昆虫と自然 2024年2月号 土壌昆虫と節足動物 多様性と生態系機能
2024年2月号の昆虫と自然は土壌動物特集。
卒業生と共著でワラジムシ亜目の種分類について書きました。
唐沢重考, 横井登太 (2024)
ダンゴムシ・ワラジムシの種分類の現在
昆虫と自然, 59: 23–28.
2024年1月9日火曜日
ゴキブリ・マイウェイ
午前
・シーケンス準備
・授業準備
午後
・Rゼミ
・論文書き
ゴキブリ・マイウェイ この生物に秘められし謎を追う
面白いです。
タイトルから想像できる通りゴキブリに関する本だが、ゴキブリの生態を単に紹介しているのではなく、ゴキブリを研究している若き研究者の生き様を写した本である。
ゴキブリを好きな人は少ないと思うが、昆虫の研究では、まあまあの人気者である。
不快害虫としての研究はもちろん多いのだが、ゴキブリの多くは森林の中で生活しており、枯死材のなかで生活する種もいる。
枯死材はリグリンとセルロースという動物には分解しづらい物質の塊なので、ゴキブリは枯死材をどのように利用しているのか、さらには、分解者としての機能・役割など、生態学的に興味深い動物なのである。
また、子育てをする種もいるため社会性という観点からも興味深い。
著者の対象も枯死材で生息するクチキゴキブリという種なのだが、上記のような分解者や子育てとは違った観点で研究をしている。
そもそも昆虫好きだったそうだが、ゴキブリに興味を持つようになったのは、高校時代に総合的な学習の時間(のようなもの)で研究課題を探しているときに、先生がマダガスカルオオゴキブリを紹介してくれたためだった。
その後、九州大学に進学し、卒業研究でクチキゴキブリの研究を開始するのだが、そこで、世界で初めて、雌雄がお互いに翅を食い合うという現象を発見した。
現在進行形で進められている研究なので、何のために翅を食い合いをしているのかついて、はっきりとした答えは書かれていないが、ゴキブリはとても綺麗好きなのかもしれないそうだ。
翅の食い合いという興味深い現象の紹介だけでも十分に面白いのだが、卒業研究から博士課程までの生き様(苦悩?)を分かりやすい文章で面白おかしく紹介しており、まるで小説のように読める。
また、所々に著名な先生が登場し、金言を与えるのだが、著者を経由して読者の心にも響く。
ただ、個人的に一番印象的だったのは、「生態学」に興味があった筆者は、大学1年生のとき、待ちに待った「生態学」の授業を受講することになるのだが、ストライクゾーンが外れた気がした、というところ。
その後、図書館で本を探し、とうとう筆者の専門となる「行動生態学」に出会うこととなる。ちなみに、行動生態学は、動物の行動を進化(機能)の観点で説明を目指す学問である。
私自身も学生時代、漠然とマクロな生物学への関心があったが、個体群や群集に対して強い興味は沸かなかった。その後、行動生態学というか進化生態学のアプローチを知り、もっと生き物を知りたいという衝動に駆り立てられた。「中高校でなぜ、これを教えないのだ。もし、大学で出会えなかったら中高校の先生を恨んだぞ」とさえ思った。
といつつ、行動生態学の研究はしていないのだが。ただ、動物生態学という授業では、個体群や群集にしようか、行動生態学にしようか迷った結果、現在は後者を扱っている。前者を期待している学生が多いか?と思うこともあるが、この本に(勝手に)励まされた気になった。
これから卒業研究を始める人、大学院進学をする人・考えている人、そして、研究室生活を経験したことが無い人にも、ぜひ、読んでもらいたい一冊。著者はYoutubeもやっているそうなので、そちらも観てみるのも良いかも。
目次
第1章:やんばるの地に降り立つ
第2章:謎の行動、翅の食い合い
第3章:三度の飯より研究
第4章:クチキゴキブリ採集記
第5章:実験セットを構築せよ!
第6章:戦場でありフェス、それが学会
第7章:翅は本当に食われているのか?
第8章:論文、それは我らの生きた証
第9章:ゴキブリの不思議
第10章:研究者という生き物
・シーケンス準備
・授業準備
午後
・Rゼミ
・論文書き
ゴキブリ・マイウェイ この生物に秘められし謎を追う
面白いです。
タイトルから想像できる通りゴキブリに関する本だが、ゴキブリの生態を単に紹介しているのではなく、ゴキブリを研究している若き研究者の生き様を写した本である。
ゴキブリを好きな人は少ないと思うが、昆虫の研究では、まあまあの人気者である。
不快害虫としての研究はもちろん多いのだが、ゴキブリの多くは森林の中で生活しており、枯死材のなかで生活する種もいる。
枯死材はリグリンとセルロースという動物には分解しづらい物質の塊なので、ゴキブリは枯死材をどのように利用しているのか、さらには、分解者としての機能・役割など、生態学的に興味深い動物なのである。
また、子育てをする種もいるため社会性という観点からも興味深い。
著者の対象も枯死材で生息するクチキゴキブリという種なのだが、上記のような分解者や子育てとは違った観点で研究をしている。
そもそも昆虫好きだったそうだが、ゴキブリに興味を持つようになったのは、高校時代に総合的な学習の時間(のようなもの)で研究課題を探しているときに、先生がマダガスカルオオゴキブリを紹介してくれたためだった。
その後、九州大学に進学し、卒業研究でクチキゴキブリの研究を開始するのだが、そこで、世界で初めて、雌雄がお互いに翅を食い合うという現象を発見した。
現在進行形で進められている研究なので、何のために翅を食い合いをしているのかついて、はっきりとした答えは書かれていないが、ゴキブリはとても綺麗好きなのかもしれないそうだ。
翅の食い合いという興味深い現象の紹介だけでも十分に面白いのだが、卒業研究から博士課程までの生き様(苦悩?)を分かりやすい文章で面白おかしく紹介しており、まるで小説のように読める。
また、所々に著名な先生が登場し、金言を与えるのだが、著者を経由して読者の心にも響く。
ただ、個人的に一番印象的だったのは、「生態学」に興味があった筆者は、大学1年生のとき、待ちに待った「生態学」の授業を受講することになるのだが、ストライクゾーンが外れた気がした、というところ。
その後、図書館で本を探し、とうとう筆者の専門となる「行動生態学」に出会うこととなる。ちなみに、行動生態学は、動物の行動を進化(機能)の観点で説明を目指す学問である。
私自身も学生時代、漠然とマクロな生物学への関心があったが、個体群や群集に対して強い興味は沸かなかった。その後、行動生態学というか進化生態学のアプローチを知り、もっと生き物を知りたいという衝動に駆り立てられた。「中高校でなぜ、これを教えないのだ。もし、大学で出会えなかったら中高校の先生を恨んだぞ」とさえ思った。
といつつ、行動生態学の研究はしていないのだが。ただ、動物生態学という授業では、個体群や群集にしようか、行動生態学にしようか迷った結果、現在は後者を扱っている。前者を期待している学生が多いか?と思うこともあるが、この本に(勝手に)励まされた気になった。
これから卒業研究を始める人、大学院進学をする人・考えている人、そして、研究室生活を経験したことが無い人にも、ぜひ、読んでもらいたい一冊。著者はYoutubeもやっているそうなので、そちらも観てみるのも良いかも。
目次
第1章:やんばるの地に降り立つ
第2章:謎の行動、翅の食い合い
第3章:三度の飯より研究
第4章:クチキゴキブリ採集記
第5章:実験セットを構築せよ!
第6章:戦場でありフェス、それが学会
第7章:翅は本当に食われているのか?
第8章:論文、それは我らの生きた証
第9章:ゴキブリの不思議
第10章:研究者という生き物
2023年12月4日月曜日
なぜオスとメスは違うのか―性淘汰の科学
午前
・授業
・授業準備
午後
・DNA抽出
・会議
・研究室片付け
なぜオスとメスは違うのか―性淘汰の科学
原題は「Sexual Selection: A Very Short Introduction」であり、正に、性選択を簡潔にまとめて紹介している本である。
教科書ではなく小説のような書き方なので、勉強のためと気張らずに気軽読める。監訳者まえがきにも「動物の行動や進化に興味のあるあらゆる人たちに教科書ではなく読み物として読んで頂きたい。」と書かれている。様々な動物が取り挙げられており、繁殖行動の研究の面白さを実感できるはずだ。
一方で、筆者自身が最後の章で「動物の性行動は一般に信じられているよりもはるかに多様なものである。」と述べているように、性選択に関連する説はいくつもあるため、全く知識のない人が読んでスッキリするのかは分からない。
この点は、(いわゆる)教科書のように無味乾燥に理論を簡潔にまとめられた方が好きな性格と、本書のように流れるような文章で書かれた読み物を好む性格の違いに依存するような気がする。私自身は教科書的な勉強で個々の知識を得た後に、このような面白い本をお話しとして読むと知識が整理されて理解が進む、、、ことが分かった。
性選択に全く知識がない人は、最低限の単語や各説の原理を理解するために、新版動物の社会(伊藤嘉昭, 2006)の3章を読んでから読むのも良いかなと思った。
最初に読むか、後で読むか、それはアナタ次第な本。動物の行動に興味があるなら外せない一冊。
目次
第1章:ダーウィンのもう1つの大きなアイデア
第2章:配偶システム—相手の数と期間
第3章:メスの選り好み
第4章:性の役割とステレオタイプ
第5章:交尾後性淘汰
第6章:性的対立
第7章:種の存続と性淘汰
第8章:結論と今後の展望
・授業
・授業準備
午後
・DNA抽出
・会議
・研究室片付け
なぜオスとメスは違うのか―性淘汰の科学
原題は「Sexual Selection: A Very Short Introduction」であり、正に、性選択を簡潔にまとめて紹介している本である。
教科書ではなく小説のような書き方なので、勉強のためと気張らずに気軽読める。監訳者まえがきにも「動物の行動や進化に興味のあるあらゆる人たちに教科書ではなく読み物として読んで頂きたい。」と書かれている。様々な動物が取り挙げられており、繁殖行動の研究の面白さを実感できるはずだ。
一方で、筆者自身が最後の章で「動物の性行動は一般に信じられているよりもはるかに多様なものである。」と述べているように、性選択に関連する説はいくつもあるため、全く知識のない人が読んでスッキリするのかは分からない。
この点は、(いわゆる)教科書のように無味乾燥に理論を簡潔にまとめられた方が好きな性格と、本書のように流れるような文章で書かれた読み物を好む性格の違いに依存するような気がする。私自身は教科書的な勉強で個々の知識を得た後に、このような面白い本をお話しとして読むと知識が整理されて理解が進む、、、ことが分かった。
性選択に全く知識がない人は、最低限の単語や各説の原理を理解するために、新版動物の社会(伊藤嘉昭, 2006)の3章を読んでから読むのも良いかなと思った。
最初に読むか、後で読むか、それはアナタ次第な本。動物の行動に興味があるなら外せない一冊。
目次
第1章:ダーウィンのもう1つの大きなアイデア
第2章:配偶システム—相手の数と期間
第3章:メスの選り好み
第4章:性の役割とステレオタイプ
第5章:交尾後性淘汰
第6章:性的対立
第7章:種の存続と性淘汰
第8章:結論と今後の展望
2023年11月20日月曜日
デジタルデバイスによる昆虫形態図
午前
・資料作成
・お絵描き練習
午後
・会議×3
・授業準備
駒形森・小川浩太 (2022)
昆虫学DX-デジタルデバイスによる昆虫形態図の作成法.
昆蟲. ニューシリーズ, 25: 128–143.
を参照して、ipadによる線画作成の練習を行なった。
下図となる深度合成の写真はHelicon Focusを使った。
CombineZPも有名、、、ネットだとこちらの方が無料かつ性能が良いという情報も、、、だけどwin専用なのでHelicon Focusを使っただけで、特にHelicon Focusを好んでいるわけではない。
まず、(ひとまず実行するだけなら)Helicon Focusの使い方は非常に簡単だった。 この画像をipadに取り込んで、上記の文献で推奨されている、ibis Paint.appというお絵描きアプリで少しトレースをしてみた。 文献の通りに道具を準備したけど、とても描きやすい。普段ipadを使っていないので、ファイルの保存場所とかに苦労したけど、おおよそのイメージはできた。あとは論文レベルの図が描けるようになるまで、ひたすら練習か。
・資料作成
・お絵描き練習
午後
・会議×3
・授業準備
駒形森・小川浩太 (2022)
昆虫学DX-デジタルデバイスによる昆虫形態図の作成法.
昆蟲. ニューシリーズ, 25: 128–143.
を参照して、ipadによる線画作成の練習を行なった。
下図となる深度合成の写真はHelicon Focusを使った。
CombineZPも有名、、、ネットだとこちらの方が無料かつ性能が良いという情報も、、、だけどwin専用なのでHelicon Focusを使っただけで、特にHelicon Focusを好んでいるわけではない。
まず、(ひとまず実行するだけなら)Helicon Focusの使い方は非常に簡単だった。 この画像をipadに取り込んで、上記の文献で推奨されている、ibis Paint.appというお絵描きアプリで少しトレースをしてみた。 文献の通りに道具を準備したけど、とても描きやすい。普段ipadを使っていないので、ファイルの保存場所とかに苦労したけど、おおよそのイメージはできた。あとは論文レベルの図が描けるようになるまで、ひたすら練習か。
2023年10月16日月曜日
招かれた天敵
午前
・野外調査
午後
・学会業務
・会議
・修論論文化
2年間続けていた毎月の定期調査が終了。早くデータ整理して論文にしたが、頑張っても来年だな。
意図的導入された外来種が紹介されている本だと思い、授業のネタに良さそうなので購入してみた本。良い意味で裏切られた。 招かれた天敵―生物多様性が生んだ夢と罠
本を開くと、まるで小説のように1900年代初頭の研究者の活動が綴られている。その内容は、農業害虫に対する化学的防除と生物的防除である。
DDTが開発されると、その効果の大きさから世界中で使用されることとなったが、その後、様々な被害が確認されDDTの使用が禁止されるとともに、天敵を導入して害虫を駆除する生物的防除に注目が浴びることとなった。
そして、時代は「化学農薬反対!生物防除賛成!」となった。
その原動力には、化学農薬の被害と、生物的防除の輝かしい成功例があった。
本書の前半は生物的防除に関わった研究者らの挑戦の伝記である。今となっては良く知られていることだが、生物的防除のために持ち込まれた天敵生物が標的生物を減らさないだけでなく、在来の生物を絶滅に追いやった失敗例も紹介されている。
この時代、在来生態系への影響をほとんど検証せずに、海外から持ち込んだ生物をどんどん放っていた。研究者の中には、在来生態系への影響を危惧する者もいたが、農家からの突き上げによって(天敵生物を放たないと仕事をしていないと思われる)止めることができなかった。
放虫について慎重に研究していた研究所は成果が出ないとして予算が削られることもあった。そして、次から次に放たれた動物達が在来生態系に化学農薬以上に大きな被害を与えることになる。
ちなみに、化学農薬批判の代表作として挙げられる「沈黙の春」では、「化学農薬の使用を禁じるべき」とは述べておらず、実際には「使いすぎが良くない」と指摘している。
しかし、農薬メーカーと反農薬を訴える市民との戦いの過程で「化学農薬vs生物的防除」という単純な二項対立の図式が出来上がってしまったそうだ。現在の観点としては、化学的防除や生物的防除などあらゆる手段を用いて、環境負荷をできるだけ抑えながら対象となる生物のコントロールするべきだろう。これらは総合的病害虫管理と呼ばれている。
半分ぐらい読み終えたあたりで、本書は人は単純な方針に乗っかりやすく、盲目的にそれを信じると大きな失敗となることを示しているのだなと感じるようになった。面白い。その一方で、疑問も残った。
著者は有名な貝類の進化研究者である。なぜ、農業害虫の本を書いたのだろう、、、。
後半の舞台は小笠原諸島である。著者の研究フィールドで、著者は小笠原諸島において陸生貝類が適応放散して数多くの固有種が生息することを証明していた。
話は前半部の終わりと繋がるのだが、世界的にアフリカマイマイが導入され、それが大繁殖したため、後に天敵生物として肉食貝類のヤマヒタチオビ、そして、ニューギニアヤリガタリクウズムシが世界中に導入されることになる。
それは、小笠原も同じであった。結果、小笠原諸島にしか生息しない固有種の多くが野生絶滅することになった。
この本は単にその事実を記すことを目的とはしていない。著者は、過去の成功よりも失敗から学ぶことの重要性を強調しており、著者自身も参加した小笠原諸島における外来種防除の失敗例を述べることが本書の大きな目的だったのだ。
失敗した理由として、「対象生物の知識不足」、「リスクの過小評価」、「最善を尽くさなかなった」ことを挙げている。
「対象生物の知識不足」では、ウズムシを正確に同定できる人が日本に一人しかおらず、基礎情報の不足から駆除方法の開発が難航したそうだ。
「リスクの過小評価」では、貝類の減少に気づいた研究者からの相談に対して、著者は影響を過小評価していた。それは、世界中で被害をもたらしたヤマヒタチオビが小笠原諸島では大きな被害を及ぼさなかったという経験が悪い方向に働いたようだ。
そして、「最善を尽くさなかなった」は、例えば、生物的防除は検討しなかったそうだ。そもそも生物的防除として持ち込まれた生物の駆除に生物を使うのは拒否反応がでるのは良く分かる。しかし、「あらゆる手段」を模索することの重要性を指摘する、、、当然のことだが難しい。
前半部における化学農薬と生物的防除における人々の思想の揺れ動きは、二項対立という単純な図式の危険を痛感した。決して対立はしておらず、ケースバイケースで使うという曖昧な判断は実は難しい。
その理由として、私は考えないといけないからだと思っている。「こうすれば良い」、そんな単純明快な行動指針を求めてしまうは良く分かる。
なぜ昆虫(しかも1900年代前半)とモヤモヤしながら読み進めた前半部を終え、著者が実際に関わった小笠原諸島の話になると、リアルタイムで種が絶滅していく怖さを感じた。
脊椎動物でさえ駆除が難しいがヒモムシが蔓延したことを想像すると絶望的になる。その状況で何ができるのか、それを生み出す力が必要だ。
小笠原諸島ではワラジムシ亜目も激減しているらしい。原因は不明なところも多い。貢献できるように頑張りたい。
400ページを超えるけど、超おすすめの一冊。
目次
第1章:救世主と悪魔
第2章:バックランド氏の夢
第3章:ワイルド・ガーデン
第4章:夢よふたたび
第5章:棘のある果実
第6章:サトウキビ畑で捕まえて
第7章:ワシントンの桜
第8章:自然のバランス
第9章:意図せざる結果
第10章:薔薇色の天敵
第11章:見えない天敵
・野外調査
午後
・学会業務
・会議
・修論論文化
2年間続けていた毎月の定期調査が終了。早くデータ整理して論文にしたが、頑張っても来年だな。
意図的導入された外来種が紹介されている本だと思い、授業のネタに良さそうなので購入してみた本。良い意味で裏切られた。 招かれた天敵―生物多様性が生んだ夢と罠
本を開くと、まるで小説のように1900年代初頭の研究者の活動が綴られている。その内容は、農業害虫に対する化学的防除と生物的防除である。
DDTが開発されると、その効果の大きさから世界中で使用されることとなったが、その後、様々な被害が確認されDDTの使用が禁止されるとともに、天敵を導入して害虫を駆除する生物的防除に注目が浴びることとなった。
そして、時代は「化学農薬反対!生物防除賛成!」となった。
その原動力には、化学農薬の被害と、生物的防除の輝かしい成功例があった。
本書の前半は生物的防除に関わった研究者らの挑戦の伝記である。今となっては良く知られていることだが、生物的防除のために持ち込まれた天敵生物が標的生物を減らさないだけでなく、在来の生物を絶滅に追いやった失敗例も紹介されている。
この時代、在来生態系への影響をほとんど検証せずに、海外から持ち込んだ生物をどんどん放っていた。研究者の中には、在来生態系への影響を危惧する者もいたが、農家からの突き上げによって(天敵生物を放たないと仕事をしていないと思われる)止めることができなかった。
放虫について慎重に研究していた研究所は成果が出ないとして予算が削られることもあった。そして、次から次に放たれた動物達が在来生態系に化学農薬以上に大きな被害を与えることになる。
ちなみに、化学農薬批判の代表作として挙げられる「沈黙の春」では、「化学農薬の使用を禁じるべき」とは述べておらず、実際には「使いすぎが良くない」と指摘している。
しかし、農薬メーカーと反農薬を訴える市民との戦いの過程で「化学農薬vs生物的防除」という単純な二項対立の図式が出来上がってしまったそうだ。現在の観点としては、化学的防除や生物的防除などあらゆる手段を用いて、環境負荷をできるだけ抑えながら対象となる生物のコントロールするべきだろう。これらは総合的病害虫管理と呼ばれている。
半分ぐらい読み終えたあたりで、本書は人は単純な方針に乗っかりやすく、盲目的にそれを信じると大きな失敗となることを示しているのだなと感じるようになった。面白い。その一方で、疑問も残った。
著者は有名な貝類の進化研究者である。なぜ、農業害虫の本を書いたのだろう、、、。
後半の舞台は小笠原諸島である。著者の研究フィールドで、著者は小笠原諸島において陸生貝類が適応放散して数多くの固有種が生息することを証明していた。
話は前半部の終わりと繋がるのだが、世界的にアフリカマイマイが導入され、それが大繁殖したため、後に天敵生物として肉食貝類のヤマヒタチオビ、そして、ニューギニアヤリガタリクウズムシが世界中に導入されることになる。
それは、小笠原も同じであった。結果、小笠原諸島にしか生息しない固有種の多くが野生絶滅することになった。
この本は単にその事実を記すことを目的とはしていない。著者は、過去の成功よりも失敗から学ぶことの重要性を強調しており、著者自身も参加した小笠原諸島における外来種防除の失敗例を述べることが本書の大きな目的だったのだ。
失敗した理由として、「対象生物の知識不足」、「リスクの過小評価」、「最善を尽くさなかなった」ことを挙げている。
「対象生物の知識不足」では、ウズムシを正確に同定できる人が日本に一人しかおらず、基礎情報の不足から駆除方法の開発が難航したそうだ。
「リスクの過小評価」では、貝類の減少に気づいた研究者からの相談に対して、著者は影響を過小評価していた。それは、世界中で被害をもたらしたヤマヒタチオビが小笠原諸島では大きな被害を及ぼさなかったという経験が悪い方向に働いたようだ。
そして、「最善を尽くさなかなった」は、例えば、生物的防除は検討しなかったそうだ。そもそも生物的防除として持ち込まれた生物の駆除に生物を使うのは拒否反応がでるのは良く分かる。しかし、「あらゆる手段」を模索することの重要性を指摘する、、、当然のことだが難しい。
前半部における化学農薬と生物的防除における人々の思想の揺れ動きは、二項対立という単純な図式の危険を痛感した。決して対立はしておらず、ケースバイケースで使うという曖昧な判断は実は難しい。
その理由として、私は考えないといけないからだと思っている。「こうすれば良い」、そんな単純明快な行動指針を求めてしまうは良く分かる。
なぜ昆虫(しかも1900年代前半)とモヤモヤしながら読み進めた前半部を終え、著者が実際に関わった小笠原諸島の話になると、リアルタイムで種が絶滅していく怖さを感じた。
脊椎動物でさえ駆除が難しいがヒモムシが蔓延したことを想像すると絶望的になる。その状況で何ができるのか、それを生み出す力が必要だ。
小笠原諸島ではワラジムシ亜目も激減しているらしい。原因は不明なところも多い。貢献できるように頑張りたい。
400ページを超えるけど、超おすすめの一冊。
目次
第1章:救世主と悪魔
第2章:バックランド氏の夢
第3章:ワイルド・ガーデン
第4章:夢よふたたび
第5章:棘のある果実
第6章:サトウキビ畑で捕まえて
第7章:ワシントンの桜
第8章:自然のバランス
第9章:意図せざる結果
第10章:薔薇色の天敵
第11章:見えない天敵
2023年9月4日月曜日
2023年8月28日月曜日
2023年8月23日水曜日
ヒメフナムシとフナムシの論文
午前
・標本整理
午後
・個人ゼミ
・資料作成
北大と共同で行なったヒメフナムシの研究が無事に受理され、今月、公開された。著者の「Touta Yokoi」は鳥取大の卒業生で西日本のDNA解析や形態観察を担当しました。
Harigai W., Saito A., Zemmoto C., Karasawa S., Yokoi T., Nagano A.J., Suzuki H., Yamamoto M. (2023)
History of the Terrestrial Isopod Genus Ligidium in Japan Based on Phylogeographic Analysis.
BMC Ecology and Evolution, 23: 38.
また、数年前から研究を行なっているフナムシに関する最初の論文が受理された。
色々と謎の多いシンジコフナムシに関する論文で、分子や形態から種の妥当性について検討するとともに、太平洋側では初となる浜名湖において本種を発見しました。
太田風歌・仲田彰男・松田彩・杉田幸司・唐沢重考 (印刷中)
宍道湖,中海,および,浜名湖のフナムシ相 (Crustacea: Isopoda: Oniscidea) について—シンジコフナムシ Ligia shinjiensis Tsuge, 2008 の分布に注目して.
Edaphologia
これでひとまずシンジコフナムシについては決着がついたつもりだったのですが、その後、対象を日本全域に広げて研究を進めた結果、さらに大きな謎に直面することとになりました。
・標本整理
午後
・個人ゼミ
・資料作成
北大と共同で行なったヒメフナムシの研究が無事に受理され、今月、公開された。著者の「Touta Yokoi」は鳥取大の卒業生で西日本のDNA解析や形態観察を担当しました。
Harigai W., Saito A., Zemmoto C., Karasawa S., Yokoi T., Nagano A.J., Suzuki H., Yamamoto M. (2023)
History of the Terrestrial Isopod Genus Ligidium in Japan Based on Phylogeographic Analysis.
BMC Ecology and Evolution, 23: 38.
また、数年前から研究を行なっているフナムシに関する最初の論文が受理された。
色々と謎の多いシンジコフナムシに関する論文で、分子や形態から種の妥当性について検討するとともに、太平洋側では初となる浜名湖において本種を発見しました。
太田風歌・仲田彰男・松田彩・杉田幸司・唐沢重考 (印刷中)
宍道湖,中海,および,浜名湖のフナムシ相 (Crustacea: Isopoda: Oniscidea) について—シンジコフナムシ Ligia shinjiensis Tsuge, 2008 の分布に注目して.
Edaphologia
これでひとまずシンジコフナムシについては決着がついたつもりだったのですが、その後、対象を日本全域に広げて研究を進めた結果、さらに大きな謎に直面することとになりました。
2023年4月3日月曜日
鳥取砂丘のカエルは何を食べているのか
午前
・標本整理
午後
・資料作成
・個人ゼミ
・標本整理
新年度が始まった。入学式はまだだけど、すでに新入生のイベントが始まっている。
昨年の3月に修士課程を修了し、現在は他大学の博士課程で頑張っている学生の論文が無事にアクセプトされた!
本文もしっかりと学生が書いてくれました。鳥取砂丘のカエルは何を食べているのか、という疑問に答えています。
Chiba H., Karasawa S. (in press)
Feeding habits of frogs in the Tottori Sand Dunes, Tottori Prefecture, Western Japan.
Current Herpetology.
修論は大きく2部構成になっており、これは全体の半分。あと半分、、、といっても5年分のデータ、も早くに論文になってほしい!
・標本整理
午後
・資料作成
・個人ゼミ
・標本整理
新年度が始まった。入学式はまだだけど、すでに新入生のイベントが始まっている。
昨年の3月に修士課程を修了し、現在は他大学の博士課程で頑張っている学生の論文が無事にアクセプトされた!
本文もしっかりと学生が書いてくれました。鳥取砂丘のカエルは何を食べているのか、という疑問に答えています。
Chiba H., Karasawa S. (in press)
Feeding habits of frogs in the Tottori Sand Dunes, Tottori Prefecture, Western Japan.
Current Herpetology.
修論は大きく2部構成になっており、これは全体の半分。あと半分、、、といっても5年分のデータ、も早くに論文になってほしい!
2022年12月19日月曜日
2022年12月6日火曜日
イリドウイルス感染
午前
・標本整理
午後
・統計ゼミ
・研究相談
iNaturalistやBugGuideを用いたイリドウイルス感染ワラジムシ類の報告した論文を見つけた。
シーケンスも行っている。
Douch J.K., Poupa A.M. (2021)
Citizen science data opens multiple avenues for iridovirus research and prompts first detection of Invertebrate iridescent virus 31 in Australia
Journal of Invertebrate Pathology, 183: 107619
・標本整理
午後
・統計ゼミ
・研究相談
iNaturalistやBugGuideを用いたイリドウイルス感染ワラジムシ類の報告した論文を見つけた。
シーケンスも行っている。
Douch J.K., Poupa A.M. (2021)
Citizen science data opens multiple avenues for iridovirus research and prompts first detection of Invertebrate iridescent virus 31 in Australia
Journal of Invertebrate Pathology, 183: 107619
2022年7月1日金曜日
北海道、新潟、広島からハナダカダンゴムシ
午前
・データ整理
午後
・卒論手伝い(野外調査)
・授業準備
・授業
・論文書き
1日中、腹の調子が悪かった。夏バテか。
前期、最後の授業が終わった!
岩手県に続き、北海道、新潟、広島からハナダカダンゴムシを初報告しました。
唐沢重考, 鈴木武, 南葉錬志郎 (2022)
北海道,新潟県,広島県における外来種ハナダカダンゴムシ (ワラジムシ亜目,オカダンゴムシ科) の初記録.
昆蟲 (ニューシリーズ), 25: 74–75.
ここから入手できます。
・データ整理
午後
・卒論手伝い(野外調査)
・授業準備
・授業
・論文書き
1日中、腹の調子が悪かった。夏バテか。
前期、最後の授業が終わった!
岩手県に続き、北海道、新潟、広島からハナダカダンゴムシを初報告しました。
唐沢重考, 鈴木武, 南葉錬志郎 (2022)
北海道,新潟県,広島県における外来種ハナダカダンゴムシ (ワラジムシ亜目,オカダンゴムシ科) の初記録.
昆蟲 (ニューシリーズ), 25: 74–75.
ここから入手できます。
2022年6月29日水曜日
土の中の生き物たちのはなし
午前
・データ解析(卒論、修論論文化)
・統計ゼミ
午後
・授業準備
・個人ゼミ
・授業ゼミ
授業の準備でチョウ標本を扱ったが、翅が壊れたり、鱗粉が付いたり、やはり苦手。液浸が使える動物が安心。
少しだけ書かせて頂いた書籍が発刊されました。
土の中の生き物たちのはなし
もくじ
第1章.土壌動物とは
第2章.土壌に生息する生物
第3章.土壌動物の機能
第4章.土壌動物ときのこ—森のきのこレストラン—
第5章.ミミズの分類から土壌動物の活用まで
第6章.ヤスデの暮らし方
第7章.系統解析と生物地理 ※担当
第8章.土の中の化学戦争
第9章.ヤスデとダニの化学防衛
第10章.土壌動物の適材適所—群集生態学—
第11章.土壌動物を活用した学校教育プログラムの提案
・データ解析(卒論、修論論文化)
・統計ゼミ
午後
・授業準備
・個人ゼミ
・授業ゼミ
授業の準備でチョウ標本を扱ったが、翅が壊れたり、鱗粉が付いたり、やはり苦手。液浸が使える動物が安心。
少しだけ書かせて頂いた書籍が発刊されました。
土の中の生き物たちのはなし
もくじ
第1章.土壌動物とは
第2章.土壌に生息する生物
第3章.土壌動物の機能
第4章.土壌動物ときのこ—森のきのこレストラン—
第5章.ミミズの分類から土壌動物の活用まで
第6章.ヤスデの暮らし方
第7章.系統解析と生物地理 ※担当
第8章.土の中の化学戦争
第9章.ヤスデとダニの化学防衛
第10章.土壌動物の適材適所—群集生態学—
第11章.土壌動物を活用した学校教育プログラムの提案
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