2014年6月18日水曜日

協力と罰

もう少し頑張れば、、、と日々を過ごす。午後から耳が痛くなり始めた。ボチボチ栄養ドリンクを投入せねば。

午前は授業×3の準備。午後から授業。その後、少しだけ学会発表の準備をして終了。今回は、大学院生との共同研究で、ほぼ同じ内容を先週末、分類学会で発表しているので、それを参考に作ってしまう予定。

明日の大学院生向け授業の準備で参考した本。


協力と罰の生物学 (岩波科学ライブラリー)

自然選択の基本は、多く遺伝子を残す性質は次世代に増える、に過ぎない。したがって、自分の繁殖を犠牲にして他の個体を助ける行為は進化できない、と予測される。

しかし、実際には、自らは繁殖をしない働きアリや餌不足の個体に餌を分けてあげるコウモリなどが知られている。このように他の個体を助ける行動を利他行動と呼ぶが、その進化を説明することは難しく、あのダーウィンも答えを出せなかった。

これらを説明する有力な仮説が血縁選択説で、ざっくり言うと、似た遺伝子を持っている血縁が遺伝子を次世代に残してくれるなら、自分は残せなくても良い、というもので、アリなどでは、これで説明できるのかも知れない。

しかし、上記のコウモリでは、血縁以外も助けることが示唆されている。そこで、登場するのが互恵性の考えである。こちらもざっくり言うと、助けられた個体が助けてくれた相手を覚えていて、相手が苦しいときにお返しをするならば、お互いに得するので進化するのでは、という考え。

この考え、興味深いのは、お返しをしない個体が出てきた時。そのような個体、つまり、裏切り者は、他の個体からの援助のみを受けるので、ドンドン数を増やすことができる。そして、このような裏切り者が多くなると、助ける個体がいなくなるので、その集団は崩壊することとなる。これを「共有地の悲劇」と呼ぶ。

つまり、血縁でない個体が協力し合う集団は、裏切り者の蔓延の危険性をはらんでおり、その集団が維持されるには、それらの対処が重要となる。沖縄に住むトゲオオハリアリというアリの働きアリの中には、裏切って子育てをせずに自ら子どもを産もうとする個体が出現するらしいが、パトロールしている女王に見つかるととっちめられるのだとか。

共有地の悲劇や裏切り者への罰の例が満載。また、ヒトを対象とした社会心理学実験(公共財ゲームなど)の例も多数紹介されている。例えば、協力的なヒトに対して罰を与えてしまうことや、罰を与えること自体に快感があるのかも、とか。こんな生物の見方もあるのだよ、と大学生に進めたい一冊。

目次
1.仲良きことは美しきかな
2.ダーウィンの困惑
3.協力の進化を説明せよ!
4.罰のチカラ
5.ヒトはけっこう罰が好き?

著者は、下記の2章も執筆しているが、こちらの方がちょっとだけ数式が出てきてイメージしやすいかも。


生態学と社会科学の接点 (シリーズ 現代の生態学 4)

ちなみに、上記の本でも引用されている論文の一つも紹介しておく。アリで共有地の悲劇が生じる例を示した論文で、結構がとてもキレイ。共有地の悲劇を実証したのは、微生物以外では始めて?

Public goods dilemma in asexual ant societies.
Dobata and Tsuji (2013) PNAS, 110: 16056–16060.

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