taqを変えてPCR。昨日、PCRがうまくいかなったのはtaqのせいではなく、サンプルのせいだったようだ。
あとシーケンス結果が返ってきたので、その整理で午前中が終了。
午後、会議に出てから、新しいサンプルのPCR。文献整理をして終了。
雪と氷の世界を旅して: 氷河の微生物から環境変動を探る
この本の口絵に氷河のカラー写真があるが、一面真っ白、、、ということもなく、所々に黒い汚れが見られる。
排気ガス?などと思ったが、実は、これは微生物である。
筆者は、この氷河に生息する微生物の研究者である。
氷河や南極のような氷雪地帯の氷は、雪が積み重なることでできる。酸素安定同位体を使うと夏の水と特定できるそうで、その手法を用いることで夏が分かる、すなわち、積み重なった年数が分かる。
また、この氷の中には、当時の空気が閉じ込められているため、それを掘り起こし、化学分析することで、過去の大気の状態を知ることができる。このような研究により温暖化が科学的に証明されるのだが、筆者は、このような環境に生息する微生物に注目している。
なぜ、微生物なのか。低緯度や低標高の氷河では、夏に氷が溶け大気が閉じ込められないので、代わりに微生物が使えるのではないか、と考えたのである。
微生物は気温が高くなる、つまり、夏にバイオマスを増やすはずだ。そこで、数十mの氷の柱を掘り出し、深さごとに微生物の量を調べた結果、層状になっていることが分かった。
そして、様々データと突き合わせ、微生物が季節のマーカーとして利用できることを示した。
その後、世界各地の氷河の微生物を対象として、様々なアイデアで研究が展開されていく。とくに、鉱物により黒色微生物が増え、それが熱を吸収することで氷河溶けやすくなる、という仮説は、地球環境を考える上で重要テーマを提唱したと言える。
ちなみに、氷河にはコオリミミズというミミズが居て、雪氷藻類というこの環境ならでは藻類を食べるそうだ。
氷河を赤色に染める藻類など、もちろん知らないことも多く書かれていたが、微生物のマーカへの応用や黒色微生物による氷河の融解などは、とてもシンプルなアイデアでありながら、応用性の高さに感心する。
氷河の調査は寒くて大変そうだな、と容易に想像はつくが、このような辺境地の微生物調査では、自らが持ち込んだ微生物の混入(コンタミネーション)が結果に大きく影響してしまう。そこで、雪を掘って作った実験室では白衣を着て実験をするらしい。
論文を読んだだけでは絶対に分からない、氷河のフィールド調査の大変さを少しは理解できたかな。実際には、想像よりも遥かに大変だろうが。
筆者は、大学生活で目的を見つけられなかったが、氷雪生物学と出会い大きな目的に向かって邁進するようになった。ダラダラ生活している大学生、読んでみて下さい。それにしても、このシリーズはこんな感じの人が多いな。
もくじ
1.氷雪生物学との出会い
2.はじめての氷河観察
3.再びアイスコア掘削へ
4.赤い氷河とさまざまな氷雪生物
5.砂漠の中の茶色い氷河
6.極北に広がる黒い氷河
7.消えゆく熱帯の氷河生態系