昨日は大阪へ。明日は東京へ、、、飛行機飛ぶかな?
名著が多い、共立スマートセレクション。この本もとても勉強になった。
生物多様性という言葉が浸透する一方で、その意味が曖昧である、という筆者の不安から、それを解消するために書かれた本。
出だしがとても面白い。
トロフィーハンティングと呼ばれる、大型動物の狩猟を楽しむ道楽がある。生物多様性の保全の立場からは、当然、これは良くないこととのように思うが、トロフィーハンティングで得られる利益を動物の保全に回すことで、絶滅危惧種の個体数回復が報告されている。
トロフィーハンティングの画像を見れば、私でもそれなりのショックを受ける訳で、多くの人は感情的にトロフィーハンティングを拒絶すると思われる。
一方、絶滅危惧生物の保全には、多くの予算が必要であり、持続的に個体群を維持できるレベルでトロフィーハンティングを認めるのも重要な策なのかも知れない。このように生物多様性の保全とは、単純なテーマではない。
また、著者は、日本人が魚釣りの釣果をみても嫌悪感が小さいことに関連して、動物の殺害に対する嫌悪感の文化的背景についても指摘する。この問題は、日本の捕鯨文化に対する西洋の反発を考える上で重要な点であり、日本人がアフリカの哺乳類の殺害に対して、発言することの難しかを感じた。
ちなみに、著者は、途上国における動物保全に難しさの原因の一つとして、経済格差についても指摘している。
さて、冒頭のこの話題で、生物多様性は、単純に生物の保全だけを目指すのではなく、その利用もまた重要であることを理解した後は、多様性の定義、群集の形成機構、生態系機能・サービスへと話題が続く。
どれも簡潔で、しかし、多くの説明がなされている。とくに、多様性の定義では、ベータ多様性や系統的・機能的多様性など、近年、多様性研究では不可欠となったトッピクが紹介されている。
また、群集の形成機構では、必然性と偶然性を理解することの重要性を明示し、理解しにくい偶然性、確率論について分かりやすい説明がなされている。
生態系機能・サービスでは、やはり最近の大きなトピックである、生物多様性-生態系機能、の充実した解説が行われている。
最新の生物多様性研究を理解できる良書。
もくじ
1.はじめに—生物多様性について考え始める
2.生物多様性の多様性
3.生物多様性を形作する—偶然性と必然性が織りなす
4.生物多様性の果たす役割—人類の福利と関わる
5.おわりに—生物多様性をめぐって