標本整理をしてから、少し論文書きをして午前中が終了。
午後、ABSの講習。どんどん海外の研究をする気力が失せる、、、。
その後、締め切りが迫った原稿を少し進めて終了。
岡山大学の宮竹先生の新刊。必読!
面白い。宮竹先生が研究されてきた昆虫の交尾行動の研究を中心に、世界の動向にも触れている。
学生時代のヘリカメムシ、沖縄県職員時代のウリミバエ、岡山大学赴任以降のコクヌストモドキ、ヨツボシケシキスイ、オオツノコクヌストモドキ、アズキゾウムシ、そして、モンガゲロウ、が研究対象となっている。
コクヌストモドキでは、死んだふりが天敵からの捕食を免れる適応形質であることを証明する。しかし、すぐに死んだふりをするオスは、交尾相手を見つける上では、その用心さが仇となる。自然界では、このコストとベネフィットのバランスで性質が決まっているのだ。
オオコクヌストモドキは、クワガタのようにオスのみが大きな顎を持つ。そして、この大顎は予想通りに、オス同士の戦いに使われ、大きな顎を持つほど、その戦いに強い。
また、この大顎の大きさは、体全体の大きさとも関係している、つまり、ごっつい体のオスは、大きな顎を持ち、そして、オス同士の戦いに強い。
しかし、この形質間の相関が大きな問題を起こす。ごっついオスの娘は、ごっついのである。しかし、ごっついメスは、腹部が短く、細身のメスよりも産卵数が減ってしまう。
つまり、オス間の闘争で有利な進化(ごっつい化)が生じると、メスの繁殖で不利になる、というオスとメスの間で利害の対立、つまり、性的対立が存在したのである。
このように、様々な昆虫を対象にすすめられた研究は、性的対立を浮かび上がらせてくる。
宮竹先生の研究ではないが、人のオスとメスの間にも性的対立を示唆する研究も進められているそうだ。
面白いので例を、
オルガニズムに達しないセックスでは、女性は精子を体液と一緒に排泄するそうだ。つまり、女性は、オルガニズムを利用して受精する相手の精子を操作できるかも知れないだ!
他にも面白ネタがあるので、興味がある人は本を。
もちろん、人間のセックスネタだけでなく、ウリミバエの大量飼育おける体内時計の変化(そして生殖隔離の可能性)や負け記憶など、まだまだ多くの研究成果が、面白く、そして、分かりやすく紹介されている。
読んだら、きっと行動生態学を好きなってしまう一冊。
もくじ
1.ドーパミンが生き方と求愛を決める
2.がんばるオス
3.オスががんばるとメスはどうなってしまうのか?
4.そして「性的対立」が生じる
5.愛の最終決定権を握っているのはメスである
6.愛はタイミングで決まる
7.オスとメスの決別
8.性的対立とは何か?