本日は、10年前の標本を整理して終わった。
虫から死亡推定時刻はわかるのか?―法昆虫学の話
偶然見つけた一冊。
想像はできるが、この本を見つけたとき、本当にいるのか、と思った。
自然界には、腐肉食動物と呼ばれる、動物遺体を食べる動物がいる。有名なのはハイエナやハゲタカなどの大型動物だが、シデムシやウジムシなどの昆虫もいる。
そこで、人の遺体に群がる昆虫から、その方が亡くなった時間の推定しよう、というのが法昆虫学である。つまり、法医学+昆虫学=法昆虫学。
13世紀の中国の書物に、鎌にハエが群がることから殺人犯を見つけた、という法昆虫学的な記述もある、実は古い学問分野である。
「想像できる」のは、動物遺体では腐肉食動物群集の遷移が生じるので、それを逆算すれば、いつ死んだのかは分かるだろうと思ったからである。
筆者が特に利用しているのはウジムシ(ハエの幼虫)だ。
遺体が発生すると、すぐにハエが訪れ卵を産み付ける。そして、時期に孵化して、成長、蛹を経て成虫となる。
昆虫の成長は温度に依存してほぼ一定なので、その成長速度が分かれば、遺体に付着しているウジムシの成長段階から死亡時刻が推定できるのだ。
当然、遺体の放置されていた環境によって、推定誤差は大きくなるが、何も情報が無いよりは良い、というのが捜査をする際の気持ちだろう(法昆虫学は普通、事件で使われる)。
著者は岩手医科大学に所属しているが、岩手県警は死体発見の際に昆虫を採集するそうだ。
ちなみに、アメリカには遺体の腐敗過程を研究する研究施設があるそうだ。オーストラリアでも2016年から研究が開始されたが、さすがに日本では行われていないとのこと。
そして、「CSI:科学捜査班」というアメリカのドラマには、法昆虫学者が出ているそうだ。こんど観てみようかと。
扱っている内容はグロテスクだが、本書の描写は気持ち悪くない。昆虫学の可能性、犯罪を解決するために努力している人、を感じられる一冊。
もくじ
1.法昆虫学って何?
2.法昆虫学者という仕事
3.死体菜園
4.法昆虫学をつかう