学会に向けて、少しずつ勉強を始める。
Effects of non-human species irradiation after the Chernobyl NPP accident
Geras'kin et al.(2008)Environment International, 34, 880-897
チェルノブイリ事故によるヒト以外の生物の影響に関する総説。とりあえず、土壌動物と昆虫のとこをメモ。総説なので、調査方法などは不明。ただ、調査時に放射線量を測定していない論文は引用していないそうだ。
ちなみに、チェルノブイリ事故は、1986年4月26日に発生。多くの生物が成長や繁殖の時期であり、とくに影響を受けやすかった可能性がある。
1.リター性動物においては、被放射線量29Gyの地域では壊滅的影響、9Gyの地域で著しく個体数が減少した。
2.耕作地(?:arable soils)の土壌動物は、影響が比較的小さい。壊滅的影響の報告はない。このような環境では、土壌中に生息しているので、影響を受けにくい(?)。
3.種組成は個体数ほど影響は受けない。
4.ササラダニ(最大個体数の動物)は、爆発現場近くでは15種、30km地点で25種が発見された。文献上では33種が報告されている。
5.事故から1年後には少しずつではあるが個体数は増加した。放射線の影響は発生の初期段階(繁殖も含む)に影響が大きいと考えられることから、要因は周辺からの移入と考えられる。ミミズは対象区(非汚染?)の15%だが、卵嚢が確認された。土壌動物全体の個体数は、文献の45%程度。2.5年後には、個体数はほぼ完全に回復。ただし、種多様性は10年後でも事故前の80%程度。
6.甲虫やトンボでは、FA(対称性のゆらぎ)が大きくなった。10年後、甲虫の角(二次性徴)のFAは、事故前や対象区(非汚染?)と比べて大きな値を示した。
7.森林のリター性動物に影響が出るのは9Gy程度と推定され、1Gy以下では、まず影響はないと考えられる。
チェルノブイリは、とんでもない大爆発なので、直後、その周辺では、ほ乳類も含め根絶に近い状況になったようだが、事故現場から30km以内において、ネズミは翌年、より移動性の低い土壌動物でも2.5年後には個体数は復活したようだ。この結果から推測すると、(これらの動物にとっては)環境としては十分に生息可能で、外からの移入した動物が空いた環境で環境収容力まで増えるのだろう。
10年経っても多様性が低いのは、放射線の影響というよりは、分散力の低い種などが移入できないのが原因か。ただ、FAのように放射線の可能性が疑われる影響が10年後でも確認されているのは原因の救命が必要だ。
Gy(グレイ)は放射線量を表す値と考えれば良く、よく報道で使用されるSv(シーベルト)はヒトに特化した値らしい。HPによると、1Gy=1Svと考えて良さそうだ。リター性動物の被害ラインは「1Gy=1000 mGy=1000000 μGy(μSv)」で、これまでの積算量で最も高い値を示している飯館村でも約7mGy(6934 μSv)なので、まず福島では土壌動物への影響は確認されないと思う。それを証明するために、調査をする必要があるけど。
事故現場から30km以内は未だにヒトが住めない状況らしい。でも、動物や植物は復活しつつあり、人為的影響が無いおかげで、むしろ、個体数が増えたり、ワシの繁殖場所になったりと、生態系には良い影響が出てるかも、、、というやや皮肉も書かれている。