2011年7月31日日曜日

偽気管

久しぶりにCubaris論文に没頭。どうにか終了。明日、見直して英文校閲に出せるか。

一カ月ほど、投稿が遅れた最大の理由は、perispiracular areaと呼ばれる形態の記述に手こずったため。

ワラジムシ類は、腹肢の外肢で呼吸を行うので、空気を取り入れるための孔(spiracle)が外肢にある。この孔が1個の場合はmonospiracular、複数の場合はpolyspiracularとなり、重要な分類形質になる、、、そうだ、知らなかった。この孔の周辺をperispiracular area(PSA)と呼ぶ。

ちなみに、ワラジムシ類の呼吸に関わる器官はlungとかpseudotracheaと呼ばれる。生物学事典(岩波書店)によるとlungは、脊椎動物における呼吸器官、腹足類(カタツムリ)の呼吸器官、とされている。多分、生物全般の呼吸器官のことをlungとして良いのだろう。

では、pseudotracheaとはなんだろうか。pseudoは「偽の」という意味なので、またまた生物学辞典で、tracheaを調べてみると、脊椎動物における気道の主要部を形成する管、節足動物の呼吸器官、とされている。そして、それは昆虫では気管と呼ばれ、クモ類では気管の変形物として書肺、ワラジムシ類では白体(偽気管)がある、と書かれている。恐らく、形態学・発生学的に、ワラジムシ類と昆虫では呼吸器官に違いがあり、ワラジムシ類の呼吸器官にpseudoを付けpseudo-tracheaとしたのを、そのまま日本語に訳して偽気管と呼ぶようにしたのだろう。

まとめると、ワラジムシ類の呼吸に関する器官全体を偽器官・白体(pseudotrachea)もしくは肺(lung)と呼び、そのうちの空気を取り入れる孔をspiracle(monospiracular、polyspiracular)と呼ぶ。

Cubaris murina♀の腹部を腹面から見たところ。PSAと書かれたところにspiracleがある。


上のPSA部分を剥がし取り、背中側から観察したところ。凹んでいるのが分かるが、これがspiracleで、1個しかないので、monospiracularとなる。