昨日、reviseを送った論文が無事に受理されました。
Growth-related taxonomic character variation in Mongoloniscus koreanus Verhoeff, 1930 (Crustacea, Isopoda, Oniscidea), with implications for taxonomic confusion.
Tanaka R., Karasawa S. (in press) Edaphologia
修論の一部なのだが、当初はこのような研究をする予定がなかった。大和魂を纏う学生の頑張りによって完成した論文なので、思い出を少し。
修論の最大の目的は、外来種であるオカダンと共存できていると思われたMongoloniscusの生活史の解明と、この2種が2年間に渡り同所的に採集できることを示すことにあった。
大学内の草地に調査地を設置し、2年間、毎月ひたすら動物を採集して、種同定、体サイズや性を調べるという忍耐のいる計画を立てた。逆に言えば、これをやり続ければ良いと思っていた、、、。
とは言え、在来種の同定は難しいことは分かっているので、Mongoloniscusの種同定ができるか、研究を始める前に学生と記載論文を読み、調査地から採集した標本を調べた。
その結果、採集した標本全てで第7脚の腕節が膨らむことが分かり、これはM. koreanusであることも分かった。この形態は非常に観察しやすく、これらなら計画通りに研究を進められるだろうと、予定通りに始めることにした。
学生は計画通りに、毎月ワラジムシ類を採集しては頭の写真を撮って脚を引っこ抜く、という作業を続けていた。しかし、あるとき、あまり脚が膨らまない個体がいる、と相談を受けた。
いたか、と。当然、論文に膨らむのが特徴と描かれているということは、膨らまない種がいるのである。M. vannameiの記載論文を教えて、膨らまないはこの種だよ、一応、他の形質も調べてみよう、と話しながら、徹底的に調べてみることに。
すると、上の写真の脚を持つ個体は、その他の形態は全てM. koreanusの形態と一致した。その一方で、M. vannameiと完全に一致する個体も発見された。当然、腕節は膨らまない。
どういうことだ、、、。2人で色々と話あった結果、M. koreansの小さな個体は腕節が膨らんでいない、と考えると全ての辻褄が合った。
生活史を調べるには小型の個体の種同定が不可欠であるため、この問題に決着をつけなければならない。しかし、これに決着つけるには、DNA解析をしたり、形態解析をしたりとかなりの労力を必要とする。
毎月の採集だけでも大変そうなので、難しいかなと思いつつ相談したところ、大変さを理解できていないのか、諦めることを知らなない大和魂が覚醒したのかは分からないが、決着をつけよう、となった。
その結果、種の表徴とされている形態の幾つかは成長とともに変化することが分かった。その一方で、成長や性別の影響を受けない形質もあることが分かり、生活史の研究を完成させることに成功した。ただ、この形質を確認するために、2000個体以上の背中を解剖する羽目になったが。
この研究のおかげで、私自身も楕円フーリエ解析を勉強するきっかけとなった。
メインデータも早いうちに論文化したい。
当人は現在ヨーロッパにいるのだが、そのヨーロッパがかなり厄介な状況になってきたのが心配だ。
本日はDNA抽出を少し行った。子供向けのイベントの日だったようで、校舎内をウロウロしている。