昨日の続き。スティーブ・ジョブズのスピーチをもう少し考えてみた。せっかくなので、本学総長の卒業式式辞と比較してみたり。ジョブスのスピーチについては、このサイトの日本語訳を参考。
両者とも学生に対し「3つのことを伝えたい」としている点は同じ。結婚式の3つの袋といい、スピーチでは「3つ」にまとめるのが良いのか。
しかし、話の流れは結構、異なっていて面白い。ジョブズは、3つのテーマそれぞれの導入は、
1)最初は、点と点をつなぐ話です。
2)2つ目は、愛と敗北についての話です。
3)3つ目は、死についての話です。
と、簡潔だが、それだけでは良く分からない感じ。
それに対し、総長は、
1)一つは、人とのコミュニケーションを緊密にして、よいチームワークを築き上げるためには、対話と議論を区別しながら一緒に仕事をするとよい
2)二つは、対話や議論を進めるためには、与えられた情報を鵜呑みにせず批判的に物事を考える態度が必要ですが、併せて申し上げたいことは、批判や反対ばかりしていては、対話も議論も、前に進めることができないということです
3)三つは、自分の言葉で説明することの重要性です
と、読むのが飽きるぐらい長い。良く言えば具体的。
回りくどい説明の好きな日本人と、簡潔に説明するアメリカ人、を如実に表している気がする。この会議に出なければならない私の苦労も何となく感じられると思う。出てないけど、、、。
当然、この導入の後に、ナゼ、それが大事か、というエピソードが続く。
エピソードについては、比べ物にならなくらいジョブスの方が面白いのだが、これは、彼が波瀾万丈な人生を送った(生まれる前に養子にだされることが決まった、膵臓ガンになった、会社を首になった、世界を変えるほどの発明をした、etc)ということだけでなく、そもそもスゴい有名人で色々と知りたいという感情を頂いてしまうため、単純な比較はできないけど。でも、これだけの「聞いてみたい」エピソードがあるから、意味深な導入が可能なのだろう。
では、総長の場合。エピソードというよりは、具体的な説明が続く。「対話とは、粘り強く話を続けること」、「議論とは、考えを集めるのか、どれか決定するのか、区別すること(?)」、「情報を鵜呑みにせず批判するのは大事だが、そのときは対案を提出すると理解が一層深まる」、「物事の経緯や成り立ちを解き明かすことが良い説明となる」といったところか。分かったような、分からないような、、、3番目の、対案を出すというのは、非常に的を得ていると思う。まっ、最後の「きちんと話せば相手に伝わる」という考えを持っている、ということは良く分かった。
さてさて、ジョブズ。まず、全体を通して一環しているのは、「強い信念を持ちなさい」といったところか。そして、フレーズ、、、カッコいい。まっ、世界屈指のエンターティナーなわけで。
まず、点と点の話。若いころの経験は将来、何かの役に立つんだ、という話。自身が退学を決心し、卒業単位に関係なく自由に授業を選べるようになって、書体の授業をとった経験が、後のマックの美しいフォントの発想につながったことから、「未来に先回りして点と点をつなげることはできない。君たちにできるのは過去を振り返ってつなげることだけなんだ。」と。今は役に立つか分からないけど、いつか役に立つと思って信じてやりなさい、と。つまり、将来になって「あんなのが役に立った、、、」と気づく、ことしかできないということ。経験しておかなければ、気づくこともない。
そして、愛と敗北。首になった経験を基に、「信念を失うな」と。そして、信念を失わないために、「本当に満足を得たいのであれば進む道はただひとつ、それは自分が素晴らしいと信じる仕事をやること。さらに素晴らしい仕事をしたければ、好きなことを仕事にすること」と、そして、見つからないのであれば、探し続けなさい、と。
「役に立ちそうなことよりも、好きなことをやりなさい」、、、どこかで聞いた記憶が。何となく、青木先生とジョブズ、顔も似てる、、、?
最後に、死の話。時間は限られている、人に流されている時間はない、自らの道を歩みなさい、と。内なる声を聞きなさい、と。会議に出ず、厄介書類を放置して、Burmoniscus問題に取りかかれ、、、と。
後の2つは、アメリカ的な発想だと思う。転職するのが普通の国だし。日本では、分かってはいるけど、ナカナカ出来ないというのが本音だと思う。
ただ、聴衆している学生が、世界屈指のスタンフォード大学の卒業生と本学の卒業生、という違いがあり、話し手が聞き手を考えて話の内容を変えた可能性もあるので、単純な比較はダメ。
本学の卒業式に出ていないので何とも言えないけど、ジョブスの動画を見ていると、ところどころに学生の笑い声が入っているのが分かる。これが話すセンスなんだと思う。「人生最後の日だと思って生きなさい、いつか正しいと分かる」、本の引用らしいけど、面白い。本学の学生は気づくだろうか、、、。