2019年8月20日火曜日

遺伝子・多様性・循環の科学: 生態学の領域融合へ

午前
・標本整理

午後
・標本整理

古い標本の整理と論文書きに向けての標本整理。いくつかの部位ではお絵描きもした。


遺伝子・多様性・循環の科学: 生態学の領域融合へ

サブタイトルにもあるように、本書の最大のテーマは融合である。

生態学は、空間的にも時間的も様々なスケールを扱っており、それらは進化生態学、群集生態学、生態系生態学、、、と細分化された学問として発展してきた。

より深く生態現象を理解するために、このような細分化は重要な枠割を担ったが、それらの間に明確な境界があるわけでなく、また、それぞれはお互いに影響し合っているため、それらの相互作用(フィードバックループ)を理解することは極めて重要である。そして、その理解を目指す(目指して研究している方が執筆した)のが本書である。

各章の冒頭に各研究の生態学における位置付けの説明があるが、生態学の知識が全くない状況で読んでも、各著者の研究の面白さ・凄さは理解できないと思う。本書は、教科書ではなく、最先端の研究を知る本と考えた方が良い。

内容は、「進化-群集」、「群集-生態系(機能)」、「進化-群集-生態系」の大きく3つに分かれている。

今では当たり前になりつつあるが、条件が揃えば生物は短期間で進化をする。この急速な進化は、生物群集における生物間相互作用に影響を及ぼし、その結果、新たな進化を生じさせる。このフィードバックがどの程度、普遍的なのか、そして、その影響はどれぐらい強いのか、この解明を目指すのが「進化-群集」の目的である。

「群集-生態系(機能)」は、生態系の応用的側面を扱っていることもあり、現在、最もホットな分野である。大雑把に言うと、生態系、とくに、生物多様性がもたらす環境への影響(とくに、人間への恩恵)の解明を目指している。生物が絶滅することが人間の首を絞めることになる、、、のか、早急に答えを見つけなればならない。

「進化-群集-生態系」は、前2者以上に大きな融合を目指している。概念・理論的な説明も多く、私の理解不足で3分野の融合を強く実感することは難しかった。ただ、小笠原諸島の貝類を例とした適応放散、非適応放散の解説など研究内容は非常に面白く、とても勉強になった。

読者として、大学生から大学院1・2年生を想定しているそうだ。私が修士時代に読んでも半分も理解できなかったと思う、、、。生態学を勉強している大学生・大学生は自分の知識レベルを知るために、そして、生態学におけるトレンドを知るためにも是非、読んでおくべき一冊。

もくじ
1.進化から群集へ,群集から進化へ
  —階層間相互作用の意義
2.チョウ類とそれを取り巻く生物群集
  —急速な進化と断続平衡
3.外来種における生態と進化の相互作用
  —外来種管理への応用は可能か
4.代替生活史戦術と個体群動態
  —行動学的基盤の視点から
5.生物多様性と生態系機能
  —実験系から自然群集・生態系へ
6.湖沼生態系における生物と物理環境の相互作用
  —正のフィードバック・履歴現象・中位捕食者の解放
7.環境汚染による撹乱が及ぼす微生物生態系への影響
  —群集機能・多様性と環境応答
8.植物と土壌微生物のフィードバック
  —その成り立ちとしくみ
9.地球システムにおける陸上生態系
10.生態系とダーウィン・マシーン
   —マイクロコズムから見た適応進化
11.呼吸の多様性が駆動する元素循環
12.生態化学量論から読み解く進化と生態のフィードバック
13.海洋島陸産貝類の群集と進化
   —小笠原諸島を例として