今日も天気が良い割に、あまり暑くなく、作業が効率良く進んだ。調査地Umiのピットフォールの設置終了。林業について、色々と相談中。
ナカナカ興味深い論文を発見。
高校生物IIの授業が進化の理解に及ぼす影響ー現行の学習指導要領に基づく進化教育の課題を探るー
山野井貴浩・佐倉 統・鈴木一臣・武村政春(2011)生物教育, 52, 28-37
高校での進化の授業が、進化の理解にどれほど影響しているのかをアンケートで調べたもの。
高校理科の新学習指導要領では、「進化」が重要視されている。その真の理由は分からないが、多分、「きちんと」した生物多様性の保全の理解が、一般人としても不可欠な時代となり、それを「きちんと」理解するためには、進化の正確な理解が不可欠であるということに文部省が気づいた、と私は考えている。
しかし、「進化」は厄介なほどに誤解が多い。この誤解のことを、専門的には、ミス・コンセプションと言うらしいが、これがナカナカ修復できないという研究報告がこれまでにも沢山あるようで、改善のための教材研究も海外では盛んに行われているみたい。筆頭著者の山野井さんは、高校の先生なんだけど、このような教材の普及(Origami birdとか)に力を入れているすごい人。
進化が、物理や化学、さらには、生物の他の分野と比べて、とくに厄介なのは、何となく理解したつもりで、話をしてしまうこと。以前は、私も気づいたら「間違ってますよ」と訂正していたが、イヤ〜な雰囲気になるので、最近は、このような人たちを改善するのは諦めて、これから先生になる若い人たちに頑張ってもらようにしている。
例えば、この論文でも使われたアンケート問題。
1.進化は、単純なものが複雑なものへと、生物の集団が変化することである。
2.進化は、世代時間の短い生物であれば、数日の期間でも観察することができる。
3.自然選択と同様、人間の手によっても進化を起こすことができる。
4.自然選択の過程には、異なる種の間の弱肉強食の闘争が必ず伴う。
答えは、1:×、2:○、3:○、4:×、となる。
この論文の結論としては、
1.高校生物の進化を学習した人としていない人では、アンケートの正答率に6%しか違いがなく、授業はミス・コンセプションの改善にあまり貢献していない。
2.教員の正答率の低い項目で、生徒の正答率も低い傾向にあり、教師の理解不足が、高校生の理解不足の原因になっている可能性がある。
3.正答率が低いのは、目的論的な進化観、小進化、小進化のタイムスケール、自然選択の条件。
3については、私も講義で丸まる1回使って説明しているけど、どれぐらい理解しているだろうか。
他に興味深かったのが、私も以前から感じていたんだけど、自然選択と用不用説を並記することで、用不用説も正しいと誤解させてしまうので削除しよう!、という考えのところ。今回のアンケートでは、並記してもあまり用不用説が正しい、という誤解は無いようなので、今後、並記することの学習効果の検討が必要だとか。
進化は、「”世代”を経て、”集団の遺伝的構成”が”変化”すること」と定義される。なので、一生のうちの変化、例えば(Wikiから)、ピカチュウが、
は、生物学的には間違い。
あと、定義をきちんと読むと、姿形が変わっていないくても、環境に合致していなくても、進化しえることが分かる。