本日、締切の書類を朝一で提出。
審査から返ってきたダニ論文を投稿。色々と事情があって大幅変更したので、再投稿が必要かな?
その後、某EU国の博物館から借りていた標本を発送。
放ったらかしにしてあったシークエンス結果の整理をしつつ、これまた放置してあった本を読む。
スズメ――つかず・はなれず・二千年 (岩波科学ライブラリー〈生きもの〉)
少し前に新聞を賑わせていた、スズメが減っている、と指摘した研究者によるスズメの本。誰でも知っているあの鳥の知らない世界。
スズメは普段の生活でもっともよく見る鳥であることに疑いはないだろう。それもそのはず、スズメは人の近くにしか住んでいないのだ。
スズメが人の近くで生活する理由としては、人がいるおかげで天敵が近寄り難いことが考えられるのだとか。
しかし、このスズメ。人の近くは好きなのだが、人は嫌いらしい。確かに、ちょっとでも近寄れば、スズメはパタパタと飛んで行ってしまう。大正時代の文献には「児童ノ卵雛採集」と書かれているそうで、当時は、子ども達が、遊びで卵やヒナを採っていたのだとか。ということで、人為選択が働いたのかも、と考えているそうで。
日本文化におけるスズメの話しなど、非常に興味深い話しが沢山あるのだが、やはり注目は、スズメが減った、という話。
スズメの農業被害数、スズメの駆除・捕獲数、分布の変遷、および、標識調査、の4つのデータ全てがスズメの個体数減少を示しており、スズメが減少していることはほぼ間違いない。
となるとその理由は?と気になるのが研究者。そこで、著者が立てた仮説は、「巣を作る場所が減った」、「子育てが上手くいかない」、「一人立ちした後、繁殖前に死んでしまう」であった。
よくよく考えるとスズメの営巣ってみたことないな、と思ったら、やはり、スズメは屋根瓦の隙間など、住宅などの構造物の隙間に営巣するらしく、普通に生活していたら見つけるのが難しいみたい。
で、この住宅の隙間に巣を作るという性質が、個体数減少を引き起こした可能性がある。というのも、最近の住宅は密閉性が高く作られており、隙間が少ないので、スズメが営巣できないらしい。
また、住宅地周辺に原っぱが少なくなったため子育ての餌が足りないのも原因と考えられている。事実、筆者らの調査で、農村のスズメは2、3匹のヒナを育てるのに対し、住宅地や商業地のスズメは1匹しか子育てしていないことが分かっている。
繁殖年齢までの寿命はまだ良く分かっていないが、人の生活様式の変化が、人と共に生きてきたスズメを減少させていることが分かってきた。
学生自体の私は、このように人の活動に依存して生きている生き物が、人の生活様式の変化によって減少するのは、特に気にする問題ではないと思っていた。他にも里山とか。
だって、現代人の生活様式が始まったのはたかが数万年前なので、それ以前は、そのような生き物も人の影響無しで生きた訳だから、絶滅することはないだろう、、、と。
ただ最近は少し成長したのか、人の生活に完全に依存してしまった生き物は、その生活様式が急に変わると、その変化に対応することができずに絶滅することもありそうだな、と理解し始めた。
特に、最終氷河期が終わったのが約1万年前であり、日本に人が入ったのが、それ以前であることに気づき(というか、単純に知識不足だけど)、現在の気候になってから、日本の自然は常に人間とともに存在してきたんだな〜と思うようになってからは、人の干渉もそれなりに自然に組み込まれているのかな、と考えられるようになった。
目次
1.スズメの誕生
2.スズメの素顔
3.人がいないと生きていけない?
4.日本史の名脇役
5.農害鳥スズメ
6.スズメが減っているって本当?
7.人とスズメの未来
日本史の名脇役は、著者の博識ぶりが良く分かる。伏見稲荷大社では、スズメの焼き鳥が売っているのだとか。京都に行ったら、食べてみたい。