2012年1月27日金曜日

集合性

研究以外の作業に時間を割いた一日。

日曜日が卒論発表会ということで、その指導もしてみたり。

気になっていた論文をやっと読んだ。国際的なワラジムシ類マニアの集まりでも発表されていた。

Individual Preferences and Social Interactions Determine the Aggregation of Woodlice
Devigne et al. (2011) PLoS ONE, 6

ワラジムシの集合行動を引き起こす原因の実験検証を試みた論文。これまでの研究は、集団形成の適応的意義や環境条件を調べた研究が多いが、本研究では、個体間の相互作用の役割を調べている。

実験系は単純だけど、面白い。塩ビ管で作った円形の実験場内に2つのシェルター(ガラス板)を作り、さらに、それに赤色セロファンを載せて明るさを変化させたりしている。そもそも、シェルターを設置しない、単純環境も準備している。明るさも3段階、試したり。

ただ、結果の解釈が少し分かりづらい。

大まかな結果としては、

1.どの条件においても最終的には壁際に大きな集団を形成する。その前に、小さな集団を形成することも多い。強明条件では、やや形成過程に違いが見られる。

2.シェルターの実験では、最終的には、どちらか一方のシェルターに大きな集団を作る。赤色と無色のシェルターでは、赤色を明瞭に選考するが、赤色の濃さの違いに選好性はない。

で、考察としては、

1.最終的に壁際に集団を形成する、無色よりは赤色シェルターを好むことから、走触性(thigmotaxis)と負の走光性は持っていると考えられるが、その性質だけでは、集団形成は説明できない。なぜなら、走触性が効いているだけなら壁沿いにランダムに停止して良いハズ(壁に触れる前に別個体に触れれば集団が形成されるが)。負の走光性が効いているなら、2つの赤シェルターに分かれて集合しても良いハズ。したがって、なんらかの個体間の関係が働いている。

2.最終的な大集団を形成する前に小さな集団を形成することが良くあるが、そのような集団はシェルターの外など、あまり良くない環境に形成されることがある。これは、個体間の関係性によって、引き起こされていると考えることができる。これを集団的な意思決定とか協同的な意思決定と読んでいるらしい。

3.また、2のような一見、適応的でない行動の意義の解明は今後の課題。例えば、大きな集団では、競争が激化するので、あえて小さな集団を好む可能性がある。これは、それぞれの集団のコスト&ベネフィットのトレードオフで決まると考えられる。

個体間にどのような作用が働いているのかについては不明。個人的には、走触性+αでも説明できる気がする。つまり、個体に触れるのと壁に触れることを、違うと認識していれば、壁沿いは好むけど、別の個体を探すことになり、出会ったら止まることになる。このαを個体間作用という表現しているのだろうが。

個体の適応的な行動よりも集団(他個体)により行動が決定してしまうという考えは面白かった。

チャンと集団で行動できない個体とか、走触性とか、本筋とは違った部位に、(私にとって)とても大事な事が書かれていた。