今日も、解剖を100個体弱進める。昨日、準備しておいた標本を共同研究者に送ったが、京都は大雪のため、配送が送れる場合があるとか、、、。福岡も少し積もった。
Wikiに載ってしまうくらい有名な生態学者、宮竹先生の本。この本と同じシリーズで、ビックネームが続く。次は誰なのかな。
恋するオスが進化する (メディアファクトリー新書)
面白いです。テーマは、簡単に言うと、「交尾に対する意気込みが、オスとメスでは違う」ということかな。
表紙をめくると、「動物のオスとメスが出会い、愛し合って子どもを作る。あなたがそう思っていたら、本書に衝撃を受けるだろう。」、と書かれている。衝撃を受けて下さい。
性的対立と呼ばれるこの研究分野は、2つの衝撃的な研究により、その口火が切られることになった。
1つ目。1995年、ショウジョウ(?)バエの精液の中に、メスの寿命を短くする物質が含まれていることが発見された。つまり、交尾をするだけで、メスは寿命が短くなってしまうのである。
2つ目。ヨツモンマメゾウムシのメスは、交尾するオスをキックして振り落とす。そこで、メスの脚を切断してみると、オスは普段よりも長時間交尾ができることが分かった。つまり、メスは、オスと交尾をしたくないのである、、、ナゼ。そこで、衝撃的な写真が登場。これは、オスの交尾器の先端で、危険極まりないトゲトゲが生えている。で、メスの生殖器の内壁は傷だらけになっており、交尾をしたメスの寿命は短くなることが分かった(実際はもう少し複雑)。
で、疑問。オスは、ナゼ、毒物質やトゲトゲを進化させ、自分を産んでくれるメスを傷付けるのか?
バサっとはしょるけど、これらの形質は、オスが自分の精子を確実にメスに使わせるために進化したのである。ちなみに、メスも寿命が短くならないないように対抗策を進化させていることも分かっている。
つまり、オスとメスは、交尾に対して対立してしまう(性的対立)。
こう考えるとまたまた、不思議な疑問が出てきて、メスは交尾で被害を受けることが多いのだが、それにもかかわず、複数のオスと交尾をするメスが存在する、、、ナゼ。これはまだ、解決していない問題なんだとか。
そして、これらの研究は、ただ俗的に面白いということだけでない。害虫を駆除する方法の一つに、生殖能力のないオスを大量に放ち、野生のメスと交尾をさせ、繁殖を阻害し、個体を減らす方法がある。この方法では、生殖能力のないオスが、きちんと交尾をする必要があるのだが、その理解には、この性的対立の解明も重要となる。日本でも沖縄のハエを根絶するのに、この方法が用いられたのだが、筆者も関わっていたのだとか。
この手の本の醍醐味、著者の生き様。やはり、素晴らしいことが書かれていたのでメモ。1年生の授業で使おう。
「世界で自分だけが知っている謎。これを知る瞬間をもてることこそ研究の醍醐味だ」
「高校までの勉強は先人が研究して明らかにしたことを学ぶものだが、大学では、世界で誰も知っていないことは何か、を知るための学びから始まる」
「大学での研究は未来の教科書を作るためにある」
一つ気になったのが、ワラジムシが交尾前ガードをする、と書かれているが、このワラジムシは何を指しているのかな?ISOPODA(ワラジムシ目)のことかな。陸生ワラジムシ類は交尾前ガードしない、と思うが。
本の構成は、性と性選択の紹介をした後、性的対立へと流れる。ただし、記述が、かなり擬人化されているので、分かりやすいが、少し注意が必要かも。この手の話題は、研究結果を拡大解釈して、人に当てはめて面白おかしく書いた本もあり、過去に学術書で批判されたこともある。この本は、日本のトップの研究者が、面白おかしく書いた本である。
宮竹先生は、最近、ダンゴムシに興味があるらしいので、そのうち、ダンゴムシの交尾でも新しい発見があるのかも。