Burmoniscus論文を共同研究者へ。少し気が楽になったので、卒論の修正を進めてみたり。
私の研究対象の一つであるワラジムシ類は、本来は海に生息していたと考えられている。ということで、現在もその仲間の多くは海にいる。
その一つがこれ。オオグソクムシ。ダンゴムシの心に関する研究で、今や有名人になった森山先生から、小学生の出前授業で使いたいと言って、お借りしている標本。ナカナカ迫力のある動画を発見。
Zoological Scienceの新刊が発行されたということで、パラパラ見てたら、前号に、森山さんの論文が掲載されていた。
Burrow Plasticity in the Deep-Sea Isopod Bathynomus doederleini (Crustacea:
Isopoda: Cirolanidae)
Matsui et al. (2011) Zoological Science, 28: 863-868
一昨年の特別セミナーで話して頂いた内容で、オオグソクムシの穿孔能力が、とある条件により変化するよ、というもの。
とある条件とは、環境の複雑さで、筆者らは、海底に横たわるクジラの遺体などを想定しているようだ。
直径60cmの水槽に25cmの厚さの寒天を敷き、その穴の掘り方を調べている。この研究の目的である環境の複雑さの影響を調べるため、T型の塩ビ管(オオグソクムシは中を通ることができる)を半分の水槽に設置している。つまり、塩ビ管ありを複雑環境、塩ビ管なしを単純環境、とする。森山さんの研究は、いつも実験方法のアイデアがとても面白い。
1.掘った穴の深さは、複雑環境の方が有意に深い。
2.穴堀に関わった時間は、複雑環境の方が有意に長い。また、複雑環境内において、塩ビ管を通った個体の方が、通らなかった個体よりも長い穴を掘った。
3.複雑な環境では、長く、かつ、chamber(部屋構造?)を持つ穴を掘り、それを巣として利用している。単純な環境の浅い穴は、一時的な捕食者からの回避に利用している。
4.複雑な環境において、より深くの穴を掘る理由については、良く分からない。
複雑な環境は、イントロに書かれているように、クジラの遺体のようなものを考えているのであれば、そのような環境で深く穴を掘るのは、より良い餌場を探しているのでは?と思ってみたり。ただし、入口から頭部を出して、捕食らしき行動が観察されるのだとか。なので、巣穴と判断している。
最後に書かれているが、著者達は本来、オオグソクムシが環境を認識し、それにともない穴掘り行動を決定する能力を持つことに興味があるのだろう。
でも、本当に面白いのは、深海の生物を、海岸線の無い長野県で研究をしてしまう、森山さん自身だと思った。毎月、富山まで海水を汲みに行ったのだとか。