2017年7月25日火曜日

光に集まる

論文の準備で文献整理。これを含めて、あと2本は出来るだけ早く投稿してしまいたい。外来種5部作の第3と4段。第5段はしばらく無理そうだ。

夕方から、昆虫の視覚研究で有名な、弘中満太郎先生のセミナーに参加。

昆虫が光に集まるメカニズムに関する内容で、ここから総説が入手できる。

光に集まる性質は、正の走光性と呼ばれ、多くの昆虫で確認されている。それを引き起こす機構として、これまで以下の3つの仮説が提唱されていた。

コンパス理論:光源に対して一定の定位角度を保って体軸を固定する性質を持つ。月のように遠いければ良い目印になるのだが、間違って電灯を目印にしてしまうと、近づいてしまう。

マッハバンド理論:明暗の境界が最も暗い(明るい)という錯視と、最も暗いところに行く、という性質が合わさり、光源の近くに行ってしまう。

オープンスペース理論:閉鎖された空間から脱出するために、空間内の明るい部分(開放空間の可能性が高い)に移動する性質があり、間違って光源に近づいてしまう。

しかし、弘中先生は、様々な実験から明暗の境界に誘引されることを明らかにした。

では、なぜ、明暗の境界に虫は誘引されるのか。自然条件の観察から、空と植物の境界(輪郭)に移動していることを見出し、さらに、この波長のコントラストに誘引されていることを実験により証明に成功した。

個人的には、マッハバンド理論に似ている気がしたが、マッハバンドは最も暗いところに誘引されるのに対し、弘中先生の理論では、境界そのものに惹かれる点が異なっている。

この研究のすごいのは、この性質を利用することで、害虫駆除などに使える効率の良い捕虫灯の開発が可能になること。

応用的利用の価値のある基礎研究で、とても羨ましいと思った。