2022年3月3日木曜日

カニムシー森・海岸・本棚にひそむ未知の虫

午前
・標本整理

午後
・会議(オンライン)×3
・論文作成手伝い


カニムシー森・海岸・本棚にひそむ未知の虫

タイトル通り、カニムシを容易に紹介した本。

いわゆる学術書ではないが、ただのお話とも異なり、形態、歩行速度、生活史、標高による分布変化など内容は科学的である。巻頭に様々な種のカラー写真があり、絵合わせ同定にも使えそう。

本書にも書かれているが、見た目がサソリに似ているため、実際に見ると興味を持つ人が多いカニムシ。

形態だけでなく生態も興味深く、とくに繁殖生態に面白い特徴がある。塊として生み出された卵、その後も母親と繋がり栄養をもらうのである。

また、他の動物に便乗する種もいるなど、興味深い点が多い動物である。

しかし、研究はあまり行われていないのが現状である。

私が知る限りでは、日本におけるカニムシの専門家は、著者を含めてごく僅かである、、、2〜3名?

最大の理由は、益虫にも害虫にもならないということだろうが、もう一つの原因として私が思うに、中途半端な大きさが挙げられる。

カニムシの体長は数mm程度である。土壌動物学では中型土壌動物と呼ばれるサイズである。

しかし、中型土壌動物の代表格であるササラダニやトビムシは1mm以下のものが多く、カニムシよりもさらに小さい。

小さいことは研究をする上で悪いことばかりではなく、一般的に小さい動物は大きい動物よりも個体数が多いため、採集がしやすいという利点がある。

実際、これらの動物は1平方メートルに数万個体生息しており、100ccの土壌をツルグレン装置に設置すれば簡単に100個体を採集することができる。ちなみに、トビムシやササラダニの研究者はカニムシよりは多い、、、少ないけど。

一方、カニムシはやや体サイズが大きいせいか(捕食者でもあるためか)、1平方メートル当たりの個体数は数〜数十個体ぐらいに過ぎない。

したがって、カニムシを調べるには、それなりの面責の土壌を調べなければならない。

ここで問題となるのが、今後はその小ささである。ダンゴムシぐらい大きければ、野外において肉眼で探すことができるのだが、カニムシは肉眼で探すにはやや小さく、できないことはないが効率が悪い。

ということで、筆者は試行錯誤の結果、1地点2Lの土壌をツルグレンに設置しているそうだ。

つまり、採集効率があまり良くないのである。

このように扱いにくい動物というのは、仮に面白い生態を持っていても研究が行われにくい。そいう意味では、カニムシは採集を頑張れば面白い研究ができるかもしれない。

著者は教員をしながら、試行錯誤を繰り返しながら研究を推進されてきた。その後、大学で教鞭をとった。昔は、高校で教員をしながら学術研究を行う先生が多かったと聞く。

現在、学校業務が忙しくて、それどころではないと思うが、ぜひ、この本を読んで、研究をしたい心を燃やしてもらえればと思う。

著者紹介をみると、玉川大学を卒業後、鳥取大学農学部の大学院に進学をしている。ということで、鳥取大生にも読んで欲しい。

もくじ
第1章.カニムシ学ことはじめ
第2章.カニムシに至る道
第3章.カニムシの生態
第4章.カニムシの採集と飼育