2024年7月9日火曜日

フナムシ論文について

午前
・データ解析

午後
・データ解析
・学外会議
・データ解析

初めてのNGSデータに挑戦。どうにかプログラムを実行できるようになった。

私たちが書いたフナムシ類の論文(太田ほか, 2024)と、最近、出版されたAriyama and Hiki(2024)の関係について質問があったので整理してみた。
太田ほか(2024)では、宍道湖に生息するLigia shinjiensisと(旧)Ligia exoticaが独立した種であることを示した。

この2種には比較的明瞭な形態差が示されていたのだが、Ligia shinjiensisは(旧)Ligia exoticaに比べて小さいことから、(旧)Ligia exoticaが低塩分濃度の環境において成長が阻害されたのがLigia shinjiensisではないかと疑ったのが発端である。

で、結果的には、遺伝的にも形態的にも独立した種であることが示された。ただし、(旧)Ligia exoticaの小型個体とLigia shinjiensisを形態で区別することは極めて難しいことも分かった。

さて、Ariyama and Hiki(2024)では、Ligia shinjiensisが(旧)Ligia exoticaの新参異名であると扱っているのだが、これは、太田ほか(2024)で独立した2種と示した種が同一種だった、ということではない。

これまで(旧)Ligia exoticaと呼んでいた種には、以前から大きな遺伝的分化があることが知られており、Ariyama and Hiki(2024)はこれら遺伝的分化した集団のうち2つを新種として記載した。つまり、太田ほか(2024)で(旧)Ligia exoticaとして扱った種は、この2種のいずれか(もしくは、さらに別種)である。

そして、太田ほか(2024)でLigia shinjiensisとしていた種を(新)Ligia exoticaに変更したことになる。

ちなみに、Ligia exoticaのタイプ標本は行方不明とのこと。

ということで、太田ほか(2024)とAriyama and Hiki(2024)では、学名の扱いには違いがあるが、種の分け方については大きな相違はない。