2020年10月6日火曜日

共生微生物からみた新しい進化学

午前
・面談
・標本整理

午後
・会議
・書類書き
・標本整理


共生微生物からみた新しい進化学

節足動物の共生細菌について勉強になるかな、と思って購入したが、買って大正解だった。

まずは、生物の進化の歴史と、それに関わる共生関係の重要性が分かりやすく紹介される。

細胞が出現し、そして、多細胞が生まれるという進化の歴史は、(個人的には)あまり面白く感じないことが多いのだが、文章が上手いのか非常に理解しやすい。

また、その長い進化における細菌同士の共生の役割、すなわち、細胞内共生の適応的意義の説明も分かりやすい。

このような共生の進化は長い歴史で起こる稀な現象のように思われるが、5年間の培養下でアメーバと細菌が共生関係を構築したことが紹介されており、きっと、現在も頻繁に行っているだと再認識する。

続いて、様々な動物における微生物の関わりが紹介される。こんなことにも共生微生物が関係しているのか、と驚きの連発である。

例えば、ある細菌が出す酵素が、襟鞭毛虫という別の生物の有性生殖を誘引するそうだ。しかも、この細菌は、イカの体内に入ると発光することで、海面の月明かりに紛れ込ませ捕食防衛にも貢献している。

犬が飼い主を判別できるのは、ヒトの体表面の細菌が出す臭いのおかげ、とさらっと書いてあるなどネタの宝庫。

そして、共生細菌の王様と言えるであろう、腸内細菌叢、に話題はうつる。

ここでは、ヒトの健康に関する話題が多く、多様な腸内細菌叢を維持することの重要性を痛感する。また、マウスの実験では、腸内細菌が脳に影響を与え、さらには、性格にも関係していることが分かってきているそうだ。

ページを進めると、免疫系への影響にフォーカスされる。

よく耳にすることだが、綺麗な環境で生活していると病気(アレルギー)になりやすいという話だ。この本では衛生仮説と呼んでいる。

例えば、統一前の東西ドイツでは、経済的に裕福な西ドイツの方が花粉症に3倍なりやすいというデータがある。

しかし、近年では、「汚い環境で生活する」ことが重要ではなく、「進化の中で獲得してきた細菌が取り除かれたことが問題」という旧友仮説が台頭してきているのだとか。

この仮説は、共生細菌と共進化をしてきたと考えれば、直感的には納得しやすい。ノーベル賞の対象となったピロリ菌は、胃潰瘍や胃がんなど重篤な病気を引き起こすため、最近では、ピロリ菌は駆除するが、ピロリ菌を駆除するとアレルギーを発症しやすくことが分かってきたそうだ。

抗生物質や滅菌処理によって、何でもかんでも微生物を消失させると、大きなしっぺ返しを食うのかも知れないと痛感した。

このように微生物との共生は、生物が生きていく上で不可欠な存在であるが、微生物も自然選択の下で利己的に生きているため、時には宿主を熾烈な戦いが起こる。

で、ダンゴムシが登場!ボルバキアによる性転換が紹介されている。キタキチョウやハリガネムシなど、宿主操作の話題が続く。

植物の陸上進出における共生微生物の重要性があっさりと紹介されたのち、反芻動物、昆虫、そして、発酵食品へと話題がうつる。

最後に、菌塚、という菌に対する感謝の碑が紹介されている。この本を読み、私たちの生活は微生物に支えられていることを知ったら、一度は訪れたいと思うだろう!

期待していた昆虫の共生微生物は、シロアリ、ゴキブリ、アリ、カメムシが扱われており、当初期待していたところは知っている内容だったが、興味深い内容が分かりやすい文章で書かれており、一気に読めるオススメの一冊。

もくじ
1.微生物に満ちあふれる地球
2.生命進化最初の30億年—単細胞微生物の時代
3.動物と微生物の関わり
4.腸内細菌叢
5.「脳-腸-微生物叢」相関
6.腸内微生物叢と免疫系の働き
7.共生微生物と宿主のせめぎ合い
8.生物が陸上に進出するにあたって共生が果たした役割
9.反芻動物と共生微生物
10.昆虫の共生微生物
11.発酵食の歴史