2017年10月16日月曜日

昆虫の交尾は、味わい深い…。

出張続きの1ヶ月が終わった。

夏からくすぶっていたGIS論文をひとまず完成させ英文校閲へ。

あとはこれを今年中に投稿したいが、、、。



昆虫の交尾は、味わい深い…。

筆者は、今年のイグノーベル賞、トリカヘチャタテムシの研究をしたグループの一員。

タイトルの通り、昆虫の交尾の話なのだが、筆者はとくに交尾の形態とその機能に興味がある。

ハサミムシの交尾を中断させるとピアノ線のようなものが見える。これが大きな発見へとつながる。

このピアノ線のようなものはオスの交尾器であり、その長さは体長とほぼ同じである。

次に、メスの受精嚢を調べてみると、オスの交尾器よりも長く、体長の2倍以上であった。

なぜ、この昆虫は、こんなにも長い交尾器と受精嚢を持っているのだろうか。

そこには、オスとメスのシビアな戦いがあった。実験に使ったハサミムシのメスは複数のオスと交尾をする。

そこで、オスは自分の精子をできるだけ多く使ってもらうために、できるだけ受精嚢の奥にまで交尾器を挿入し、他のオスの精子を掻き出す。このためにオスの交尾器は長く進化した。これがオスの立場。

で、メスの立場。まず、大きなオスほど交尾に成功する可能性があるので、メスは大きなオスと交尾をして、大型遺伝子を持った子を産みたい。でも、この昆虫は狭い暗闇で交尾するので、メスはオスの体サイズを判別するのが難しい。

そこで、メスはオスの2倍の受精嚢を持ち、複数のオスと交尾をすることにした。なぜならば、長い受精嚢を持つおかげで、オスは元々ある精子の2割程度しか掻き出せないので、色々なオスと交尾をすれば色々な遺伝子を得られるのである。

メスの受精嚢が短ければ、オスに多くの精子を掻き出され最後のオスの精子を、もっと長ければ掻き出すことがでず最初のオスの精子を使うことになり、たまたま小さなオスの遺伝子を利用する可能性がある、それを回避できる絶妙な長さの受精嚢が進化したのである。

不勉強で知らなかったのだが、交尾時に創傷がつくことがあるのだが、これを適応的な観点から研究が進められているそうだ。その一つの仮説が、メスが傷つけられたことにより、生命の危機を感じて交尾を抑制し、また、すぐにでも多くの卵を産もうとする、というものだ。

まだまだ議論が続いているそうだが、傷が適応的な行動の結果なんて、、、と驚いた。

もちろん、トリカヘチャタテムシについても触れられている。

オスの長い交尾器の意義はすぐに解決できたのに対し、メスの長い受精嚢の意義の解明には数年かかったそうだ。ある朝、横断歩道を渡っているときに気づいたのだとか。

筆者曰く「アイデアはいつわいてくるのかわからない。しかし、常に頭の片隅を占めているからこそ、ある時にポロッと転がり落ちてくるような気がする。」、、、良いフレーズ。

この本の面白さが理解できない人は、オスの適応の観点、メスの適応の観点で考えることができていないのかも。進化、行動生態を勉強したら試しに読んでみるのも良いかも。オススメの一冊。

もくじ
1.オスとは?メスとは?交尾とは?
2.交尾をめぐる飽きなき攻防
3.パズルは解けるか?長い、交尾器の秘密
4.北へ南へ、新たな謎との出会い
5.主役はメス!