2024年1月9日火曜日

ゴキブリ・マイウェイ

午前
・シーケンス準備
・授業準備

午後
・Rゼミ
・論文書き
ゴキブリ・マイウェイ この生物に秘められし謎を追う
面白いです。

タイトルから想像できる通りゴキブリに関する本だが、ゴキブリの生態を単に紹介しているのではなく、ゴキブリを研究している若き研究者の生き様を写した本である。

ゴキブリを好きな人は少ないと思うが、昆虫の研究では、まあまあの人気者である。

不快害虫としての研究はもちろん多いのだが、ゴキブリの多くは森林の中で生活しており、枯死材のなかで生活する種もいる。

枯死材はリグリンとセルロースという動物には分解しづらい物質の塊なので、ゴキブリは枯死材をどのように利用しているのか、さらには、分解者としての機能・役割など、生態学的に興味深い動物なのである。

また、子育てをする種もいるため社会性という観点からも興味深い。

著者の対象も枯死材で生息するクチキゴキブリという種なのだが、上記のような分解者や子育てとは違った観点で研究をしている。

そもそも昆虫好きだったそうだが、ゴキブリに興味を持つようになったのは、高校時代に総合的な学習の時間(のようなもの)で研究課題を探しているときに、先生がマダガスカルオオゴキブリを紹介してくれたためだった。

その後、九州大学に進学し、卒業研究でクチキゴキブリの研究を開始するのだが、そこで、世界で初めて、雌雄がお互いに翅を食い合うという現象を発見した。

現在進行形で進められている研究なので、何のために翅を食い合いをしているのかついて、はっきりとした答えは書かれていないが、ゴキブリはとても綺麗好きなのかもしれないそうだ。

翅の食い合いという興味深い現象の紹介だけでも十分に面白いのだが、卒業研究から博士課程までの生き様(苦悩?)を分かりやすい文章で面白おかしく紹介しており、まるで小説のように読める。

また、所々に著名な先生が登場し、金言を与えるのだが、著者を経由して読者の心にも響く。

ただ、個人的に一番印象的だったのは、「生態学」に興味があった筆者は、大学1年生のとき、待ちに待った「生態学」の授業を受講することになるのだが、ストライクゾーンが外れた気がした、というところ。

その後、図書館で本を探し、とうとう筆者の専門となる「行動生態学」に出会うこととなる。ちなみに、行動生態学は、動物の行動を進化(機能)の観点で説明を目指す学問である。

私自身も学生時代、漠然とマクロな生物学への関心があったが、個体群や群集に対して強い興味は沸かなかった。その後、行動生態学というか進化生態学のアプローチを知り、もっと生き物を知りたいという衝動に駆り立てられた。「中高校でなぜ、これを教えないのだ。もし、大学で出会えなかったら中高校の先生を恨んだぞ」とさえ思った。

といつつ、行動生態学の研究はしていないのだが。ただ、動物生態学という授業では、個体群や群集にしようか、行動生態学にしようか迷った結果、現在は後者を扱っている。前者を期待している学生が多いか?と思うこともあるが、この本に(勝手に)励まされた気になった。

これから卒業研究を始める人、大学院進学をする人・考えている人、そして、研究室生活を経験したことが無い人にも、ぜひ、読んでもらいたい一冊。著者はYoutubeもやっているそうなので、そちらも観てみるのも良いかも。

目次
第1章:やんばるの地に降り立つ
第2章:謎の行動、翅の食い合い
第3章:三度の飯より研究
第4章:クチキゴキブリ採集記
第5章:実験セットを構築せよ!
第6章:戦場でありフェス、それが学会
第7章:翅は本当に食われているのか? 
第8章:論文、それは我らの生きた証
第9章:ゴキブリの不思議
第10章:研究者という生き物